2026年以降も旧冷媒システムが生き残る?揺れる米国HVAC政策と業界の反発
アメリカの冷媒転換をめぐり、大きな波紋を呼ぶ発言がありました。EPA長官Lee Zeldin氏は2025年8月下旬、演説の中で「現行の移行は拙速で混乱を招いている」と述べ、2026年1月1日以降もR-410A機器の設置を認める方向で検討していると示唆しました。これは「売り切り猶予期間(sell-through deadline)」をさらに延長する可能性を意味しており、HVAC業界に新たな不確実性をもたらしています。
もともと、この規制はAIM法に基づいて2025年1月に発効予定でしたが、在庫を抱える企業への配慮からEPAは一度猶予を設け、2026年1月まで設置を認めてきました。それが再び延長されるとなれば、事実上「旧冷媒R-410Aの延命策」となり、環境政策の一貫性が揺らぐことになります。
今後EPAは近く正式な提案を公表し、パブリックコメントを募集する予定です。しかし延長が実現すれば、市場は短期的にR-410Aの延命で安堵する一方、長期的には環境団体・業界団体・行政の三つ巴の対立を招き、HVAC市場に不透明感が広がる可能性があります。
重要キーワードの解説
- Sell-through deadline(売り切り猶予期間):旧冷媒R-410A機器の設置が許される最終期限。現行は2026年1月1日まで。
- EPA(米国環境保護庁):冷媒転換を主導する規制当局。今回、規制期限延長の可能性を示唆し議論を呼んでいる。
- A2L冷媒:R-454BやR-32など新基準の冷媒。環境負荷が低いが可燃性を持ち、専用設計の機器と施工ルールが必要。