米EPA、新たな冷媒ルール「SNAP 27」案を発表 ― プロパンなど自然冷媒の採用を後押し

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米国環境保護庁(EPA)は2025年10月24日、新たな代替物質政策プログラム(SNAP)ルール27を提案し、冷媒の使用条件を見直す方針を発表しました。この新ルールは、家庭用および小規模商業用のエアコンやヒートポンプなどにおける炭化水素系冷媒(プロパン=R290、R441Aなど)の使用をより広く認める内容です。

SNAPは30年以上前に大気浄化法(Clean Air Act)のもとで設立された制度で、オゾン層破壊物質や高GWP(地球温暖化係数)の冷媒に代わる新しい物質をEPAが評価・承認する仕組みです。

今回の改定案では、従来の安全基準であるUL規格(60335-2-40 第4版)に加えて、OSHA(労働安全衛生庁)に認定されたNRTL(国家公認試験機関)の認証を受けた製品をEPAが認可対象とするオプションも検討されています。

これまで新しい冷媒を使う機器を市場に出す際には、UL(Underwriters Laboratories)が定める安全基準が改訂されるたびに、EPAがその内容をもとに新しいルールを再度作成し、承認をやり直す必要がありました。 そのため、技術開発が進んでも実際の市場導入までに時間がかかることが多かったのです。

しかし今回の案では、OSHAが認定するNRTLによる安全試験結果をEPAが直接承認対象とする仕組みが導入される見込みです。これにより、ULなどの機関で認証を受けた製品であれば、EPAが個別の再承認を行わなくても市場投入が可能になり、結果として新しい冷媒技術の普及が格段にスムーズになると期待されています。

この提案は、HFO-1234yfやR516などの新しい低GWP冷媒も対象としており、水冷器、家庭用冷蔵庫、さらには自動車・鉄道の空調システムにも適用範囲を広げています。また、これまで制限が厳しかったプロパン(R290)の使用条件を一部緩和し、より高い安全性を確保しつつ、環境負荷の少ない冷媒導入を加速させることが狙いです。

一方で、UL(Underwriters Laboratories)は現在、冷媒使用量の制限を見直す第5版のUL 60335-2-40規格を策定中です。これまで米国ではR290の充填量を114g以下に制限していましたが、国際規格(IEC 60335-2-40 第7版)では最大988gまで認められています。IECは国際電気標準会議が定める世界共通の安全基準であり、ULはこの国際規格をもとに米国内向けの基準を作成する立場にあります。現在、ULは国際基準との「ハーモナイズ(調和化)」を進めており、第5版ではIEC第7版に近い内容を取り入れる方向で議論が進められています。これが実現すれば、米国内でもプロパンなどの自然冷媒を使用できる範囲が大きく拡大する見込みです。

さらに、ASHRAE(米国暖房冷凍空調学会)も、A3(可燃性)冷媒の使用量上限を引き上げる方向で検討を進めています。ASHRAEは建物や設備の設計・運用に関する安全基準(代表例:ASHRAE 15)を策定する技術団体で、冷媒の使い方や設置環境の安全性を規定しています。現在、研究機関Oak Ridge National Laboratory(ORNL)**が可燃性冷媒の安全性評価試験を進めており、その結果をもとに基準改定が行われる予定です。

このように、EPA(環境政策・承認)、UL(製品安全認証)、ASHRAE(設計・運用安全基準)という3つの組織が連携しながら、冷媒の安全性と環境性能の両立を図る動きが進んでいます。こうした取り組みが整えば、米国は世界基準との完全な整合化(harmonization)に近づき、2030〜2035年には新規空調・ヒートポンプがプロパン冷媒へスムーズに移行できるとの予測も出ています。

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