トランプEPA、バイデン政権下の冷媒転換規制(2023年ルール)を見直し。供給不足とコスト高騰に対応するため、期限延長やGWP上限の緩和を提示。
米国環境保護庁(EPA)は2025年10月3日、「American Innovation and Manufacturing(AIM)法」に基づくHFC冷媒転換規制の一部見直し案を発表しました。
これは、冷媒メーカーや業界団体からの再考要請を受けたものであり、トランプ政権下のEPAが、バイデン・ハリス政権下の2023年に定められた厳格な移行規則(2023 Technology Transitions Rule)を「規制緩和」する一連の措置の一環です。
AIM法は、地球温暖化を引き起こすHFC(ハイドロフルオロカーボン)冷媒の段階的削減を義務づけ、低GWP(温暖化係数の低い)冷媒への転換を促す法律です。しかし、代替冷媒への切り替えを進める過程で、R-454Bなどの新冷媒の供給不足やコスト上昇が発生し、特に空調・冷凍機器の市場で混乱が広がりました。
今回のEPAの提案は、こうした市場の混乱に対応するため、「産業界のスムーズな移行」を目指し、以下の柔軟策を示しています。
対象カテゴリー | 現行規則の主な要件 | 提案された緩和内容 |
住宅・軽商業用エアコン/ヒートポンプ | 2025年1月1日以前に製造・輸入された機器は2026年1月1日までに設置が必要 | 設置期限を撤廃(在庫のR-410A機器の販売・設置継続を可能に) |
スーパーマーケット・遠隔凝縮ユニット | 2027年以降または2026年以降、GWP上限を150/300に制限 | GWP上限を一時的に1,400に緩和(2032年1月1日から150/300の制限を再導入) |
冷凍倉庫 | 2026年以降、GWP上限を150/300に制限 | GWP上限を一時的に700に緩和(2032年1月1日から150/300の制限を再導入) |
半導体製造用チラー | 2026年または2028年に規制適用 | 100ポンド以下の冷媒充填量の機器について、適用期限を2030年1月1日まで延長 |
EPAはこれらの措置を通じて、市場の現実と規制とのギャップを埋め、企業や消費者が新しい冷媒への移行を円滑に行えるようにすることを目指しています。今後45日間にわたり、一般市民・企業・団体からの意見募集(パブリックコメント)が行われます。
背景
冷媒は、エアコンや冷蔵庫などの「温度を制御する」機器に欠かせない物質です。従来広く使われてきたHFC冷媒は強力な温室効果ガスであるため、世界各国では環境負荷の少ない冷媒への切り替えが進められています。
今回の見直しは、「環境目標の達成」と「産業界の経済的な持続性」のバランスをどう取るかという点で、米国内の政策論争を反映した動きとして注目されています。
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