- 欧州のヒートポンプ販売が2023年に5%減、10年ぶりのマイナス成長に
- ガス価格の低下と電力課税でコスト優位性が崩壊、需要が冷却
- EUの「ヒートポンプ行動計画」延期が投資と消費者信頼に打撃
- 約3,000人規模の雇用影響と、2030年気候目標の実現に黄信号
- 電気とガスの価格格差是正・安定した政策支援が再成長の鍵
電気とガスの価格逆転、政策不透明、支援の遅延──EUの再エネ暖房目標に“初の失速”が突きつける警鐘
2023年、欧州のヒートポンプ市場は約10年にわたる成長に歯止めがかかり、前年比5%の販売減となりました。欧州14カ国での販売台数は264万台にとどまり、気候中立社会に向けた重要な転換期での後退が明らかとなっています。この市場変調は、政策の不透明化と価格インセンティブの崩壊に起因しており、約3,000人規模の雇用影響も予測されています。
■ 成長から失速へ──国別の傾向
📉 大幅減少国
- フランス、イタリア、スウェーデン、フィンランド、ポーランド、デンマーク、オーストリア、スイス
📈 成長維持国(ただしQ4で減速傾向)
- ポルトガル、ベルギー、ノルウェー、オランダ、スペイン、ドイツ
それでも全体のマイナスは覆せず、四半期ごとに減速が進行している状況です。
■ 要因1:EUの「ヒートポンプ行動計画」の遅れ
2023年はEUの「Heat Pump Action Plan」が延期されたまま年を越し、消費者・投資家の信頼を大きく揺るがしました。各国で補助金制度の縮小や停止(例:イタリア)も相次ぎ、政策の予見性が大幅に低下しました。
■ 要因2:価格逆転と電力課税の影響
- 2022年はガス価格高騰によりヒートポンプが“割安”だった
- 2023年は逆にガス価格が下落し、電気税は高止まり
- 一部地域では、電気価格がガスの4倍という逆転現象が発生
→ 結果として、ヒートポンプのコスト優位性が失われた
■ 今後の打開策とEU気候目標への影響
この傾向が続けば、EUの掲げる**2030年までに再生可能暖房比率49%、ヒートポンプ6,000万台導入(REPowerEU)**といった気候・エネルギー目標が危機にさらされます。
EHPA(欧州ヒートポンプ協会)のトーマス・ノヴァク事務局長は警鐘を鳴らします:
「政策の安定と価格構造の是正が不可欠。電気とガスの価格比率を2:1に近づけるための炭素価格導入や電力課税改革が急務です。」
European Heat Pump Association


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