- ヒートポンプ業界の60超CEOが「EU行動計画の遅れ」で70億ユーロの投資が危機と警告
- 市場はガス価格の下落と補助制度の不確実性で2023年末に減速
- 米国・アジアでは普及支援が進み、欧州の競争力低下を懸念
- EHPA会長「今こそ明確な政策方向性が必要」と即時公表を要請
- 2024年5月には15か国の政府も共同で早期発表を要求
欧州委の対応遅延に業界トップが異議──雇用・脱炭素・エネルギー自立への打撃を懸念
2024年1月30日、欧州のヒートポンプ業界を代表する60名以上の企業トップが連名でウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長に書簡を提出し、「EUヒートポンプ行動計画(Heat Pump Action Plan)の遅れは、欧州の気候戦略とエネルギー安全保障にとって致命的だ」と警鐘を鳴らしました。
この書簡では、2022~2025年に予定されていた最大70億ユーロ(約1.1兆円)規模の投資が停止または海外流出するリスクがあると明言。また、すでに欧州には16万人の雇用が存在し、さらなる雇用創出の可能性も大きい中、政治的な曖昧さが業界の信頼を損なっているとしています。
📉 背景:ヒートポンプ市場の失速
2023年末、欧州のヒートポンプ販売は10年ぶりに減少。主な要因は以下の通り:
- ガス価格の低下により、電化暖房の経済的魅力が低下
- 各国の補助金制度の変更・撤廃による消費者の混乱
- EU行動計画の公表遅延による政策不透明感
この状況に対し、業界は「今こそ計画の即時公表が必要」と強調しています。
🏭 米国・アジアとの競争激化
米国やアジア諸国ではヒートポンプ普及への支援が加速しており、欧州の産業競争力が劣勢に立たされるリスクも高まっています。
欧州ヒートポンプ協会(EHPA)のマーティン・フォルセン会長は次のように述べています:
「ヒートポンプは雇用、産業競争力、脱炭素、そしてガス価格の変動からの保護すべてを同時に実現できる。今、行動計画を止めるのは誤った選択だ。」
✅ 追記(2024年5月14日):加盟国の支持拡大
2024年5月14日には、15のEU加盟国政府も共同で欧州委に対し、ヒートポンプ行動計画の早期公表を求める書簡を提出。産業界と市民団体に続き、政府レベルでも圧力が高まっています。