エネルギー効率と脱炭素の追求、中国市場での存在感をさらに拡大
世界中で脱炭素化の必要性が高まるなか、デンマークのエンジニアリング大手 Danfoss は2025年9月、中国・浙江省海盐において世界最大規模の新生産拠点「Haiyan Second Campus」を開設しました。広さは12万6,000平方メートルに及び、既存の施設を倍増させる規模となります。
背景には、世界的なグリーン技術需要の急増があります。中国は世界最大の二酸化炭素排出国である一方、政府主導で「カーボンピークアウト(2030年)」と「カーボンニュートラル(2060年)」を掲げ、脱炭素政策を急速に進めています。そのため、省エネ技術や再生可能エネルギー対応製品の需要が急拡大しており、Danfossにとって中国市場は避けて通れない成長の舞台となっています。
新キャンパスは、Danfossの3つの主要事業分野すべての製造拠点を統合し、さらに2つの応用開発センター(ADC)を設置。ここでは、建物の省エネを支えるヒートポンプや熱交換器、EVや産業機械向けの油圧モーターやバルブなど、低炭素社会の実現に欠かせない技術が開発・生産されます。欧州や米国と同等の基準で設計され、中国の産業界に世界水準のソリューションを提供する体制が整えられました。
また、このキャンパスはDanfossの「LEAP 2030」戦略の中核を担います。特筆すべきは、エネルギー効率を徹底的に追求した設計で、Reduce(削減)、Reuse(再利用)、Re-source(再生可能エネルギー活用)の三段階で脱炭素を進めます。すでに2024年には中国広核新能源と電力購入契約(PPA)を結び、2025年からは100%グリーン電力を使用。これにより、年間4万トンのCO₂削減を実現する予定です。
開所式では、中国政府関係者やデンマーク大使館の代表、Danfossの経営陣や創業家メンバーが出席し、外交75周年を記念してRoyal Copenhagenの特製プレートが贈呈されました。こうしたセレモニーは、企業投資が単なるビジネス拡大にとどまらず、両国関係を深める「産業外交」の役割も果たしていることを示しています。
今後、この新拠点は中国国内での事業拡大のみならず、アジア全体の低炭素技術の供給基地としての役割を担う可能性があります。世界最大の排出国である中国の移行を支えることは、地球規模の脱炭素の進展にも直結するため、そのインパクトは極めて大きいといえるでしょう。
重要キーワード3つの解説
- LEAP 2030戦略
Danfossが2030年までに掲げる成長戦略。脱炭素化とエネルギー効率を軸に、世界的に事業を拡大する。 - China-for-China戦略
中国市場で必要な技術を現地で開発・製造する仕組み。サプライチェーンの強化とスピーディーな市場対応を可能にする。 - PPA(Power Purchase Agreement)
電力購入契約のこと。再生可能エネルギー由来の電力を長期的に確保する仕組みで、企業の脱炭素経営に欠かせない。

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