インド政府、エアコン設定を20℃以上に制限へ

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急増する冷房需要に歯止めをかける新ルール

インド政府は、増え続ける電力消費を抑えるため、新しく販売されるエアコンの最低温度設定を20℃に制限する方針を打ち出しました。現在の最低設定は17℃で、1℃上げるごとに約6%の電力を節約できるとされています。小さな変更に見えますが、人口14億人を超える巨大市場にとっては大きなインパクトを持つ可能性があります。

背景には、エアコン需要の急増があります。インドでは年間1,000万〜1,500万台が売れ、都市化や所得の向上、そして猛暑の影響で使用が拡大しています。実際、2024年のピーク時にはエアコンが国全体の電力需要の4分の1を占めたとされ、2019年から2024年に導入されたエアコンだけでも首都ニューデリーの年間消費電力に匹敵する需要増を生んだと試算されています。さらに一部の地域では夏の気温が51℃に達し、深刻な電力不足が懸念されています。

ただし、この規制に対する市民の反応は分かれています。賛成派は「火災リスクを下げ、電気代も減る」と評価する一方で、反対派は「高温多湿の都市では低温設定が欠かせない」「小さな子どもがいる家庭には不便」と不安を口にしています。

専門家の間でも意見が交わされています。規制は前進だとしながらも、多くは最低効率基準の強化や旧型機の更新がより重要だと指摘しています。インドで販売されているエアコンの約8割は、中国では販売禁止となるほど非効率な機種であり、この状況を改善しなければ根本的な解決にはつながらないとされています。また、省エネには建物の通風設計や他の冷却手段の併用、スマート技術の活用も有効だとされています。

これまでも政府は、官公庁での室温24℃以上の義務化や、2022年に始まった「Mission Life」プログラムで節電や移動削減を呼びかけてきました。今回の新ルールは、その延長線上にある取り組みです。

今後、エアコンの普及はさらに拡大すると見込まれます。したがって、今回の規制は電力不足や温室効果ガス排出抑制に向けた「小さな一歩」に過ぎません。しかし、もし効率的な機器の導入や都市の環境改善と並行して進められれば、インドだけでなく世界の気候対策にも大きな影響を与える可能性があります。

重要キーワード解説

  • ピーク需要:電力消費が最も高まる時間帯のこと。インドでは猛暑時にエアコン使用が集中し、電力不足の要因となっている。
  • 最低効率基準:製品に求められる最低限のエネルギー効率の基準。これを強化すれば、非効率な機器を市場から排除できる。
  • Mission Life:2022年に政府が開始した持続可能なライフスタイル推進プログラム。節電や移動削減など国民の行動変容を目指す。

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