Eurovent が示す「持続可能な冷却戦略」の必要性とは
ーロッパのHVACR業界団体 Eurovent は、冷却の重要性が過小評価されている現状に警鐘を鳴らしています。冷却は単なる快適性のための空調にとどまらず、エネルギー転換(Green transition)とデジタル社会の基盤を支える要素だからです。
具体的には、水素製造(Green hydrogen)、食品のコールドチェーン、EVバッテリー生産、ワクチンや医薬品の保存、データセンター運営など、あらゆる分野で安定した温度管理が不可欠です。もし冷却が不十分であれば、食品ロスやワクチン廃棄の増加、電力網の不安定化、さらには命に関わる熱中症被害が拡大します。
しかし、冷却需要は急増しています。EUでは1979年以来、冷却用エネルギー需要が4倍に増加し、2050年には世界でさらに3倍になると予測されています。これは電力網への大きな負担となり、気候変動対策を進める上でも深刻な課題です。
Eurovent は、この課題を解決するために次のような政策を求めています。例えば、EU冷暖房戦略の改定による冷却分野への明確な位置づけ、省エネ性能に優れた製品の普及促進、冷媒ガス(HFC)の規制強化、再生可能エネルギーとの連携などです。冷却はすでに完全に電化されているため、再生可能電力との組み合わせで大幅な脱炭素が可能になります。
さらに、欧州のHVACR産業は35万以上の雇用を抱える大きな製造基盤であり、持続可能な冷却分野の技術開発をリードする立場にあります。日本にとっても、データセンターやEV関連産業の拡大とともに冷却需要が急増することは避けられず、欧州の動きは参考になるでしょう。
要するに、冷却は「環境負荷の源」ではなく、「未来の持続可能な社会を可能にする資源」であるという認識に切り替える必要があるのです。
重要キーワード3つの解説
- HVACR
Heating, Ventilation, Air Conditioning, Refrigeration の略。暖房・換気・空調・冷凍をまとめた産業分野で、人々の生活や産業の基盤を支える。 - Eurovent
欧州のHVACR業界団体。冷却や空調に関する政策提言を行い、EUの環境・産業政策に影響を与えている。 - Sustainable cooling(持続可能な冷却)
エネルギー効率の高い機器、環境負荷の少ない冷媒、再生可能エネルギーを組み合わせて実現する冷却の新しい方向性。
