ヒートポンプ減速、EUの気候目標を脅かす ― 政策支援の強化が不可欠

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2023年初頭、欧州におけるヒートポンプ販売が急減した。

  • EUが掲げる「2030年までに6,000万台追加導入」の目標が危機に。
  • 政策の変化、ガス価格の下落、高止まりする電気料金が減速の背景。
  • 欧州ヒートポンプ協会(EHPA)は、EUに対し政策強化とエネルギー価格の不均衡是正を要請。
  • 今後発表予定の「EUヒートポンプ行動計画」が市場回復のカギを握る。

欧州のクリーン暖房革命に迫るリスク

2023年初頭、欧州ではヒートポンプ販売が大幅に減少し、EHPAが強い懸念を示している。2022年の記録的な販売増の後に起きたこの急落は、EUの気候・エネルギー自立目標を危うくしている。

EUは2030年までに6,000万台以上のヒートポンプを追加導入し、暖房・冷房の脱炭素化と化石燃料依存からの脱却を図る計画だ。しかし現状は逆行している。2023年前半、イタリアでは前年同期比34%の急落、フィンランドで17%減、ポーランドで6%減を記録。全体では20~30%の市場縮小が予測されている。

要因は複合的だ。各国の政策変更、ガス価格の下落、高水準の電気料金に加え、インフレや金利上昇による消費者への経済的圧力が重なり、ヒートポンプの経済的魅力が低下。消費者の信頼も揺らいでいる。

EHPAのトーマス・ノヴァク事務局長は次のように述べた。
「2022年の販売急増は、力強い政策と勢いに支えられたものでした。しかし、突如変わった政策環境と不利な電気対ガス価格比がエンドユーザーの信頼を損ねています。これはヒートポンプ産業にとって深刻な脅威であり、欧州のネットゼロとエネルギー自立への道を遅らせるものです。」

EHPAは欧州委員会に対し、即座に「EUヒートポンプ行動計画」を実施するよう求めている。同計画では、クリーン暖房の需要拡大、価格の手頃さ確保、加盟国間での支援策共有が重視される見込みだ。特に、電気料金の是正、消費者意識向上、化石燃料補助金の撤廃、熟練技術者不足の解消といった課題に取り組むことが必要とされている。

2023年6月、EHPAと20のパートナー団体は「EUヒートポンプ・アクセラレーター」に意見を提出。これは政策立案の基礎文書であり、明確かつ迅速に実行されれば、欧州全体でのヒートポンプ普及の転機となる可能性がある。

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