空冷から液冷へ、世界のデータセンターが直面する転換点とそのインパクト
世界中でAI需要が急拡大する中、データセンターの熱対策はかつてないほど重要な課題となっています。特に次世代の半導体チップは高密度化によって発熱量が増加しており、従来の空気による冷却では限界が見えてきました。そこで注目されているのが液体を使った冷却技術(液冷)です。
2025年9月、Johnson Controlsは新たにSilent-Aire Coolant Distribution Unit(CDU)シリーズを発表しました。この装置は、サーバーラックの横やホワイトスペースの周囲に設置され、液体を循環させることで発熱源を正確かつ効率的に冷却します。冷却能力は500kWから10MW以上まで拡張可能で、小規模施設から大規模AIファクトリーまで幅広く対応できるのが大きな特徴です。
さらに、このシリーズは既存のSilent-AireやYork、M&M Carnotブランドと組み合わせることで、施設全体の冷却効率を50%以上改善できる可能性があります。例えば、1GW規模のAIデータセンターでは、20万世帯分に相当する電力を節約できる計算です。これは単なるコスト削減にとどまらず、地球規模のエネルギー問題に直結するインパクトを持っています。
また、Johnson Controlsは北米・欧州・アジア太平洋にまたがる製造拠点と40,000人以上のサービス体制を整えており、世界中のデータセンターの需要に迅速に応えられる強みを持ちます。すでにABI Researchからも「トップレベルのデータセンター冷却技術プロバイダー」と評価されており、今後さらに導入が加速していくと予想されます。
日本の関係者にとっても、これは「海外の話」ではありません。国内でもAIインフラの拡充が進めば、液冷への移行は避けられない現実となります。今回のSilent-Aire CDUは、その未来を象徴する技術であり、エネルギー効率と環境負荷削減を両立させる新しい標準になる可能性を秘めています。
重要キーワード3つの解説
- Liquid Cooling(液冷):空気ではなく水や特殊液体を使って機器を直接冷却する方式。AIや高密度チップの普及に不可欠な技術。
- Coolant Distribution Unit(CDU):液冷システムの中核となる装置で、冷却液を循環させ、正確に熱を取り除く役割を担う。
- Energy Efficiency(エネルギー効率):冷却に使う電力を減らすことは、コスト削減だけでなく脱炭素社会への貢献にも直結する。

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