環境性能と快適性を両立する次世代オフィスビルのモデルケース
三菱電機株式会社、三菱地所設計株式会社、早稲田大学は、神奈川県鎌倉市にあるZEB(Net Zero Energy Building)実証施設「SUSTIE」が、ASHRAE技術賞プログラム(2025-2026)商業建築(新築部門)のアジア地域優秀賞を受賞したと発表しました。
ASHRAE技術賞は、空調・冷凍・暖房技術の国際学会ASHRAE(アメリカ暖房冷凍空調学会)が主催する世界最大規模の環境建築アワードの一つで、1999年から毎年開催されています。建物の稼働データを基に、居住者の快適性、室内空気質、エネルギー効率といった観点から総合的に評価されるのが特徴です。SUSTIEは今回の受賞により、アジアを代表するプロジェクトとして世界選考に進みます。
SUSTIEは延床面積6,000㎡超の中規模オフィスとして国内初、3種類の最高位認証を同時取得しました。具体的には、BELSによるZEB認証、CASBEEスマートウェルネスオフィス評価でのSランク、そして国際的なWELL認証(プラチナ)です。これにより、省エネ性能だけでなく、快適性と健康性でも最高水準を満たしたオフィスビルとして位置づけられています。
施設の設計には「パッシブデザイン」と「アクティブデザイン」が融合されています。前者では、北面窓や自然換気、自然光利用によってエネルギー消費を抑制。後者では、放射空調や高効率設備を活用して、快適性と省エネを同時に実現しました。さらに、AIやIoT、デジタルツイン技術を用いた最適運用により、日々の建物性能を進化させる「進化する建築」の姿を実証しています。
屋上や庇に設置された太陽光発電設備(約360kW)により、年間のエネルギー自給率は100%を超過。竣工後2年連続でZEB基準を達成しました。また、ライフサイクル全体での炭素排出削減にも取り組み、設備容量や冷媒量を最適化することで、環境負荷をさらに低減しています。
授賞式は2025年8月16日、韓国・水原市のSuwonコンベンションセンターで開催されました。SUSTIEは「環境性と快適性を両立する未来型オフィス」のプロトタイプとして、今後のZEB普及やカーボンニュートラル社会の実現に大きな影響を与えると期待されています。
重要キーワード3つの解説
- ZEB(Net Zero Energy Building):建物の年間一次エネルギー消費を実質ゼロにする建築物。SUSTIEは都市部でも成立する中規模ZEBモデルを実証。
- パッシブ&アクティブデザイン:自然光や自然換気を活かす「パッシブ」と、高効率設備や放射空調を導入する「アクティブ」を組み合わせ、快適性と省エネを両立。
- デジタルツイン+AI運用:建物の仮想モデルを構築し、AIで運用最適化。快適性と省エネのバランスを日々改善する「進化する建物」の実現に寄与。
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