寒冷地向けヒートポンプが商用ビル市場の省エネ革新をリード
アメリカの空調メーカーLennoxは、2025年9月5日、米国エネルギー省(DOE)が進める「Commercial Building HVAC Technology Challenge」で、初めてラボ検証に成功した企業になったと発表しました。今回の対象は、商業ビルの屋上に設置される大型空調機(RTU)で、その中でも特に寒い地域でも安定して稼働する「寒冷地対応ヒートポンプ」です。
なぜこれが重要かというと、アメリカではオフィスや商業施設などの空調がエネルギー消費の約4割を占めており、省エネ性能の高いシステムの普及が急務だからです。これまで寒冷地では、外気が低温になると霜がつきやすく、従来のヒートポンプでは十分な性能を出せないという課題がありました。Lennoxはこの「霜取り問題」を克服し、厳しい条件でも安定して快適な空調を提供できるシステムを開発したのです。
今回の検証は、DOEと国立再生可能エネルギー研究所(NREL)が独立して行ったもので、性能や信頼性が公的に認められました。今後は実際のビルに試験的に導入され、冬の厳しい環境下での効果を確かめる計画です。
Lennoxは過去にも住宅用HVACチャレンジで成果を出しており、今回の商用分野での成功は130年続く同社の技術革新の歴史をさらに押し進めるものとなります。こうした動きは、アメリカだけでなく、日本を含む世界各国における省エネ空調の普及にもつながる可能性があります。
重要キーワード3つの解説
- Cold Climate Heat Pump(寒冷地ヒートポンプ)
氷点下の環境でも効率的に暖房できるヒートポンプ。従来は寒冷地で性能が落ちる課題がありましたが、新技術により解決が進んでいます。 - DOE Commercial Building HVAC Technology Challenge
米国エネルギー省が推進するプログラム。商用ビルの空調設備をより省エネで高性能なものにするため、メーカーに技術開発を促す仕組みです。 - Rooftop Unit (RTU)
商業施設やオフィスビルの屋上に設置する大型空調機。冷暖房をまとめて管理でき、省エネやメンテナンスの効率化に役立ちます。