米国EPA長官の発言に業界団体が反発――R410Aの延命か?R32/R454Bへの全面移行か? 冷媒規制の「設置期限延長」をめぐる攻防

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米国で進む冷媒転換政策をめぐり、トランプ政権の環境保護庁(EPA)が再び波紋を広げています。2025年8月下旬、リー・ゼルディンEPA長官は演説の中で「現行の移行は拙速で混乱を招いている」と述べ、2026年1月1日以降も旧冷媒R-410Aを使用する空調機器の設置を許可する可能性を示唆しました。

これは、従来の冷媒から温室効果の少ない新冷媒(A2L)への移行を定めた「AIM法」に基づく規制スケジュールを事実上緩和する方向性を意味します。EPAは2023年末に、一度だけ「在庫処分のための猶予措置」として設置期限を2025年1月から2026年1月に延長していました。ところが再度の延長が検討されていることで、HVAC業界や環境団体から強い反発を招いています。

HARDIの反論:「延長はリスクでしかない」

こうした動きに真っ向から反対しているのが、米国の暖房・空調流通業協会(HARDI)です。HARDIは8月25日に声明を発表し、EPAの方針を「法的にも市場的にも根拠がない」と批判しました。

主な主張は以下の通りです:

  • すでに十分な猶予は与えられている
    EPAは2023年に「在庫が無駄にならないため」の一度きりの延長を認めた。再延長は当初の趣旨を逸脱する。
  • 市場はすでに新冷媒へ移行済み
    調査プロジェクト「Unitary Market Intelligence」によると、2025年7月時点で米国のダクト式空調機販売の約86%がA2L冷媒対応機器となっていました。このペースで進めば、2025年の冷房シーズンが終わる頃には市場のほぼすべてがA2L機器に置き換わる見込みです。つまり、追加の延長を正当化する根拠は存在しないとしています。
  • 法律上も不可能
    AIM法は「施行1年前以降の規則変更は認められない」と明記しており、2026年1月の期限を今から動かすことは違法である可能性が高い。
  • 延長はかえって混乱を招く
    ルール変更は環境団体や州政府からの訴訟を誘発し、規制そのものが宙に浮く恐れがある。結果的に業界全体の不確実性を高めてしまう。

HARDIは「業界にとって最大の優先事項は確実性だ。EPAは2026年1月1日の設置期限を守るべきだ」と強調しています。

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