地球温暖化と省エネ需要の高まりを背景に、Bosch Home Comfortが世界的プレーヤーに
ドイツの大手総合メーカーBoschは、自動車部品や電動工具だけでなく、住まいを快適にする技術にも力を入れてきました。そして今回、同社はこれまでで最大規模となる買収を行いました。対象はアメリカのJohnson Controlsが持つ住宅・小規模商業用の暖房・換気・空調(HVAC)事業と、Johnson Controls-Hitachi Air Conditioningという合弁会社です。
この買収により、BoschのHome Comfort部門の売上は80億ユーロを超え、従業員数は2万5,000人以上となります。これまで欧州を中心に活動してきたBoschが、アメリカやアジア市場にも強い基盤を持つことになり、世界でも有数の冷暖房メーカーへと躍進しました。
なぜ今HVAC事業が重要なのでしょうか。背景には、地球温暖化の進行と省エネへの世界的な関心があります。国際エネルギー機関によれば、気温が1度上昇するだけで冷房需要は25%も増えるとされています。そのため、効率的で環境に優しい冷暖房技術を持つ企業は、今後ますます求められる存在になります。
Boschはこの流れを読み取り、「冷房需要が急速に拡大している今こそ投資のチャンス」と考えました。特にアメリカではダクト式空調、アジアでは部屋ごとに使えるエアコンや最新のVRFシステム、ヨーロッパではヒートポンプといった地域ごとのニーズに合わせた製品を展開し、グローバルにシェアを伸ばす計画です。
統合の完了は2027年を予定しており、早ければ2026年にも新しい取り組みの成果が見えてくると期待されています。Stefan Hartung会長は「BoschはHVAC市場でチャンピオンズリーグ入りした」と自信を示し、同社が省エネ型の製品で人々の暮らしをより快適にしながら、世界の成長市場をリードしていく姿勢を明らかにしました。
今回の買収は、Boschが単なる自動車や家電のメーカーではなく、環境対応型の住環境ソリューション企業へと進化する大きな転換点といえるでしょう。
重要キーワード3つの解説
- HVAC(Heating, Ventilation, Air Conditioning)
建物の「暖房・換気・空調」をまとめて扱う分野。家庭のエアコンから商業施設の大規模設備まで含まれ、生活の快適さとエネルギー消費の両方に関わる重要な市場です。 - Heat Pump(ヒートポンプ)
空気や地中の熱を利用して冷暖房を行う省エネ技術。従来のガスや石油の暖房に代わる環境負荷の少ない手段として、特に欧州で普及が進んでいます。 - VRF(Variable Refrigerant Flow)システム
複数の室内機を効率よく制御できる空調システム。商業施設やホテルなどで使われ、柔軟性と省エネ性能に優れています。
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