「Heat Pump Forum 2025」で語られたエネルギー安全保障と脱炭素への道
EHPA(European Heat Pump Association)が9月に開催した「Heat Pump Forum 2025」では、EUの2030年までに6,000万台のヒートポンプ導入という大きな目標に向け、加速の必要性が強調されました。達成には毎営業日2万8,000台の設置が必要で、現状の3倍に増やさなければなりません。
普及を妨げる要因の一つは電気への過大な課税で、ポーランドやベルギーではガスの6〜7倍課税されています。これを是正すれば、電気駆動のヒートポンプはさらに競争力を持ちます。また、新たな排出量取引制度(ETS2)により得られる収益の一部が社会気候基金として低所得層の支援に充てられる予定であり、その適切な活用が鍵となります。
さらに、産業部門向けの工業用ヒートポンプはガス依存の削減に有効とされ、同時に施工業者の再教育や誤情報対策も普及促進に不可欠とされました。電力網への負担についても議論されましたが、ヒートポンプは需要調整に柔軟性があり、導入次第でコスト削減や電気料金低下にもつながります。
重要キーワードの解説
- EHPA:欧州ヒートポンプ業界団体。
- ETS2:建物・交通部門のCO₂排出に価格をつける制度。
- 社会気候基金:低所得層のエネルギー移行支援を目的とする基金。
- 工業用ヒートポンプ:産業分野の脱炭素化を担う高温対応型設備。