コンプレッサー不要の新技術で、省エネ・静音・環境に優しい冷却が現実に
アメリカの Johns Hopkins Applied Physics Laboratory (APL) が、従来の冷蔵庫やエアコンに使われている「コンプレッサー方式」とはまったく異なる新しい冷却技術を発表しました。この技術は「CHESS (Controlled Hierarchically Engineered Superlattice Structures)」と呼ばれるナノ材料を使ったもので、電気を流すだけで熱を移動させ、冷却を可能にします。つまり、モーターやガスを使わず、シンプルで環境に優しい冷却ができるのです。
従来の小型冷却装置では効率が低く、家庭用や業務用には使えませんでした。しかし今回の研究では、従来の材料の約2倍の効率を達成し、冷蔵庫システム全体でも 70%以上効率が改善 しました。Samsung Research も共同で検証しており、実用化に向けて信頼性が高い成果です。
また、このCHESS材料は、わずか砂粒ほどの量で冷却ユニットを構成できるため、半導体工場での大量生産も可能です。これはコスト削減につながり、冷蔵庫・エアコンだけでなく、ビル全体の空調やデータセンターの冷却といった大規模用途にも広がる可能性があります。
さらに、この材料は「体温を電気に変える」こともできるため、ウェアラブル機器や宇宙探査機の電源としての応用も期待されています。従来の「熱電材料」は性能が不足していましたが、CHESSが登場したことで、営業の現場でも「次世代の冷却・発電技術」として提案しやすくなるでしょう。
重要キーワード3つの解説
- CHESS
APLが開発したナノ材料。従来より小さく、効率が高く、環境に優しい冷却を可能にする。 - Thermoelectric Refrigeration(熱電冷却)
電気の流れで熱を移動させる仕組み。モーターやガス不要で、静かでシンプル。 - MOCVD(材料製造法)
LEDや太陽電池でも使われる成熟した方法。大量生産しやすく、コスト面でも有利。
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Nano-engineered Thermoelectrics Enable Scalable, Compressor-Free Cooling
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