- BoschがAI搭載空気質センサー「BME690」の提供を開始
- VOC/VSC/COなど多様なガスを正確に検出、結露にも強い
- 空気圧・温度・湿度も測定する4-in-1の多機能センサー
- AI-Studioで独自学習可能、食品ロス削減や呼気分析に活用
- ウェアラブルやスマート家電など幅広いアプリケーションに対応
2025年2月3日 — センサーテクノロジーのリーディングカンパニーBosch Sensortecは、最新のAI搭載空気質センサー「BME690」の提供を開始しました。この高性能MEMSセンサーは、揮発性有機化合物(VOC)や揮発性硫黄化合物(VSC)、一酸化炭素(CO)および水素(H₂)など、さまざまなガスを高精度に検出します。加えて、空気圧、湿度、温度も同時に測定可能な4-in-1構成となっています。
「BME688」や「BME680」の上位モデルとして開発されたBME690は、結露が発生しやすい環境でも安定した性能を発揮。ピン互換性やサイズ(3 x 3 x 0.93mm)の互換性も保ち、簡単なアップグレードを可能にしています。
このセンサーは、Bosch独自の「BME AI-Studio」に対応し、用途ごとにAIモデルをトレーニングすることで、呼気分析や食品の劣化検知など、ニーズに応じたセンシングを実現します。最大50%の省電力化も実現しており、ウェアラブル機器やスマート家電、資産追跡デバイスなど、バッテリー駆動製品への応用にも最適です。
また、「BME690 Shuttle Board」と「Application Board 3.x」を用いた開発環境も用意されており、センサー出力の評価やBSECライブラリによる解析が容易に行えます。
VOCsとVSCsの違いを徹底解説 — 空気質センサーが検出するガス成分とは?
空気質センサー「BME690」が検出する主なガス成分のひとつに「VOCs」と「VSCs」がありますが、この2つは似て非なるものです。ここでは、それぞれの違いをわかりやすく整理してみましょう。
定義の違い
用語 | 日本語名 | 主な特徴 |
---|---|---|
VOCs | 揮発性有機化合物 | 炭素を含む有機化合物で、ガソリン、塗料、接着剤などから発生。 |
VSCs | 揮発性硫黄化合物 | 硫黄を含み、腐敗や口臭、下水などから発生する強い悪臭の元。 |
化学的な特徴
特徴 | VOCs | VSCs |
---|---|---|
主な元素 | 炭素・水素・酸素など | **硫黄(S)**を中心とする |
におい | シンナー臭、芳香など多様 | 腐った卵のような強烈な悪臭 |
代表例 | ホルムアルデヒド、ベンゼン、トルエン | 硫化水素(H₂S)、メチルメルカプタン |
発生源と用途の違い
項目 | VOCs | VSCs |
---|---|---|
発生源 | 工場、家庭用品、建材、車両など | 腐敗した食品、下水、口腔内の細菌など |
使用例 | 溶剤、香料、接着剤 | 医療分野での口臭検査や腐敗臭の分析など |
健康・環境への影響
影響 | VOCs | VSCs |
---|---|---|
健康面 | シックハウス症候群、頭痛、粘膜刺激など | 吐き気、ストレス、強い不快感を引き起こす臭気 |
環境面 | 光化学スモッグの原因物質 | 悪臭問題の主要原因として規制対象にも |
まとめ(ざっくり一言)
- VOCs:生活空間に潜む“におい”や“化学臭”の原因。
- VSCs:口臭や腐敗臭などの“強烈な悪臭”の正体。
Boschの「BME690」センサーは、これらの成分を高精度に検出し、私たちの生活環境を見える化します。空気中に含まれる見えないリスクを、数値で把握する第一歩となるのです。