欧州各国の住宅ストックとヒートポンプ市場の現状と展望

  • URLをコピーしました!

ヨーロッパ各国の住宅事情を見てみると、イギリスには約2,870万戸の住宅があり、ドイツ(最多)、フランス、イタリア、スペインに次ぐ上位の規模となっています。一方で、東欧や北欧の多くの国々では住宅数が1,000万戸未満と比較的少なく、国による住宅ストックの差が市場戦略にも影響を与えています。

暖房システムの主流は国ごとに異なります。イギリスやオランダでは、天然ガスボイラーへの依存度が非常に高く、全体の8割を超えるほどです。一方、ノルウェーやスウェーデンでは電気暖房やヒートポンプが一般的に使われています。フランスやドイツでは、ガス・電気・ヒートポンプのいずれにも偏らず、バランスの取れた構成になっています。

ヒートポンプの販売動向(2018〜2022年)

2018年から2022年にかけて、欧州では空気-空気型のヒートポンプが最も多く売れており、累計で300万台を超えました。次いで空気-水型が約290万台、給湯用が97万台、地中熱型が47万台、ハイブリッド型が38万台となっています。

イギリスでは、ヒートポンプの導入はやや遅れ気味です。空気-空気型の販売台数は5年間で約1,000台と少なく、他国と比べると控えめです。しかし空気-水型は、2018年の22,400台から2022年には53,000台まで増加しており、着実に導入が進んでいます。一方で、給湯・排気型はほとんど普及していません。

各国の導入状況と背景

フランスでは、空気-空気型ヒートポンプが年間20万台以上販売されており、その約7割は既存住宅に導入されています。夏の冷房ニーズの高さや空調機器の普及が背景にあり、MaPrimeRenovといった補助制度も普及を後押ししています。

イタリアでも空気-空気型が人気で、2022年には22.3万台が販売されました。冷房需要が大きいことに加え、「110%補助制度」といった魅力的な政策も、普及に寄与しています。

ドイツでは空気-水型とハイブリッド型が主流です。2024年以降には最大70%の補助が始まる予定で、年間50万台の導入を目標とするなど、普及拡大に向けた動きが活発です。

オランダでは、地中熱型ヒートポンプが全体の約42%を占めるなど高い比率を誇ります。空気-空気型の比率は2%程度と低いですが、税制や効率基準の整備が導入の後押しとなっています。

エネルギー価格とヒートポンプ普及の関係

電力価格が最も高いのはアイルランド(0.204€/kWh)、ガスではスウェーデン(0.0767€/kWh)が最も高い国となっています。電気とガスの価格差は、ヒートポンプのランニングコストに大きな影響を及ぼします。

今後のヒートポンプ普及に向けたポイント

ヒートポンプのさらなる普及には、次のような取り組みが重要です:

  • 補助金や税制による初期費用の軽減
  • 技術に対する理解の向上と施工者の育成
  • 電力インフラの整備と柔軟な対応力の確保

キーワード

  1. 空気-空気型ヒートポンプ(Air-to-Air HP):冷暖房を兼ねる省エネ機器。初期投資が低く、簡単に設置できるのが特徴。
  2. GWP(Global Warming Potential):冷媒の温暖化影響度を示す数値。ヒートポンプ普及では低GWP冷媒が注目される。
  3. MaPrimeRenov(マプリムルノヴ):フランスの住宅省エネ改修支援制度で、ヒートポンプ導入費用の一部を助成。
Please Check!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!