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英国における空気対空ヒートポンプのエネルギー効率と性能評価

  • COPやSCOP、SEERを用いた定格性能は高いが、実使用では性能が低下する場合がある。
  • 欧州規格EN14825による試験方法には限界があり、代替的な実地測定法も提案されている。
  • エネルギーラベルや年間消費量の表示が義務化されているが、消費者理解や比較には限界も。

定格と実績に乖離も、評価基準と技術革新で信頼性向上を目指す

空気対空ヒートポンプは、少ない電力で圧縮機を動かし、外気から熱を取り込み暖房または冷房を行うため、従来の化石燃料暖房よりも環境に優れた選択肢とされている。効率の評価にはCOP(成績係数)やEER(エネルギー効率比)が用いられ、これらの季節変動を考慮したSCOP(季節成績係数)およびSEER(季節エネルギー効率比)も導入されている。

EN14825による試験方法では、3つの気候帯における加熱需要曲線に基づきSCOPが算出され、欧州エコデザイン規則ではSCOP 3.4以上、SEER 3.6以上が求められている。実際の製品ではSCOP 3.8~4.8、SEER 4.9~8.7などの値が確認され、エネルギーラベルではA~A+++の評価が付与される。

一方、現場での性能(in-situ performance)はカタログ値を下回る傾向があり、実測ではSCOPが2.8程度と報告されることもある。これは設置環境、配管長、使用状況による影響を受けるためであり、Delta-EEやArupの調査でも同様の傾向が確認されている。

代替的な性能評価法としては、エネルギーバランス法や制御変数補償法が提案され、EN14825の更新の参考として検討されている。エネルギー消費に関しては、年間で暖房944~2438kWh、冷房189~559kWhの範囲が製品ごとに確認されており、機器の規模と冷暖房期間の違いが反映されている。

また、デンマークの研究では、電気暖房からair-to-airヒートポンプへの移行により26%の電力削減が実現したが、快適性向上による「リバウンド効果」で期待値より下回った点が示された。

キーワード

  1. COP / SCOP:成績係数および季節成績係数。ヒートポンプの暖房効率を評価する指標で、SCOPは年間を通した実使用に近い効率を示す。
  2. エネルギーラベル(A+++~G):SEERとSCOPに基づき製品のエネルギー効率を格付けし、消費者に選択の参考を提供する制度。
  3. リバウンド効果:効率向上によるエネルギー節約の一部が快適性向上(暖房時間延長など)に変換され、結果として実際の省エネ効果が期待を下回る現象
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