- ドイツZF社がR290(プロパン)を使った新型熱管理システム「TherMaS」を開発
- 従来のR1234yfシステムと比較して、EVの航続距離が最大30%向上
- ドライブトレインからの廃熱を有効活用し、寒冷地でも性能を発揮
- 米国EPAの承認待ちで、市場投入は2030年以前を見込む
- 小型軽量設計と高効率な冷暖房性能で、多様なEVに対応可能
自然冷媒R290を活用した革新的な熱管理技術がEVの未来を切り開く
ドイツの自動車部品メーカーZFは、プロパン(R290)を冷媒とする革新的な熱管理システム「TherMaS」を発表しました。このシステムは、従来のR1234yfベースの熱管理技術と比較して、EVの航続距離を最大30%改善する可能性があります。
この成果は、効率的な熱制御と電動ドライブトレインからの廃熱活用によるもので、特に冬場や極端な気候条件下で大きな効果を発揮します。ZFは、2023年にPorsche Taycanをベースにした試作車で初めてTherMaSを搭載しており、その後、より高性能で統合性の高いシステムへと改良されました。
このシステムは冷暖房ともに10kW以上の性能を持ち、モジュール構造によりさまざまなEVに組み込むことが可能です。また、冷媒の使用量を約半分に削減し、小型軽量化を実現しています。
現在、ZFは米国環境保護庁(EPA)に対してモバイル空調分野でのプロパン使用許可を申請中で、承認されれば2030年以前の市場投入を目指しています。将来的には欧州での承認も視野に入れており、EV向け熱管理市場での拡大が期待されます。
キーワード
- R290(プロパン):自然冷媒で、優れた熱力学性能と低コストが特徴。環境への影響が少なく、近年注目されている。
- 熱管理システム:EVにおける乗員の快適性やバッテリーの寿命・性能維持に重要な役割を果たすエネルギー集約型システム。
- PFAS規制:R1234yfなどのフッ素系冷媒に含まれるPFASが健康や環境に悪影響を及ぼすとして、欧州で規制強化の動きが進んでいる。