- 欧州の食品小売店市場は約30万店舗、自然冷媒導入が急増中
- CO₂システムは9万5,600店舗(商業・産業含む)に普及、前年比33%増
- 自己完結型炭化水素キャビネットは1,700万台と推定、前年の5倍以上
- 新Fガス規制でGWP150以上の冷媒が使用禁止へ(商業用は2025年から)
- パナソニックなどが欧州内でCO₂機器製造拠点を拡充し対応強化
規制と需要が後押し、欧州の冷凍・冷蔵市場で自然冷媒が一気に主流へ
欧州では食品小売店舗約30万店のうち、2024年末時点で約30%(9万700店)がトランスクリティカルCO₂システムを導入しています。この内訳は、ラックシステム(集中型)が7万6,200店、コンデンシングユニット(小型外付けタイプ)が1万4,500店。特にコンデンシングユニットは前年比71%増と急成長しています。
加えて、産業用途では4,900拠点でCO₂システムが使用されており、商業・産業合計でトランスクリティカルCO₂の導入拠点数は9万5,600箇所に達します。
背景には、EUのFガス規制改正があります。2030年以降はGWP150以上の冷媒使用が原則禁止となり、自然冷媒であるCO₂の採用が加速しています。また、ECHAによるPFAS規制案がHFC・HFO系冷媒に及ぶ可能性も高まり、代替冷媒の移行がより強く推進される見込みです。
炭化水素冷媒の市場も急拡大中で、2024年末時点の推定で1,700万台の自己完結型(自己冷却式)キャビネットが欧州で使用されています。前年の推定値(320万台)を大きく上回るのは、これまで過小評価されていた実態が、より正確なOEMおよび業界データに基づき見直されたためです。
冷凍機器に使われるプロパン(R290)やイソブタン(R600a)の充填上限が、EN IEC 60335-2-89:2022により150gから500gに引き上げられたことで、多用途対応が可能となりました。
店舗側も、メンテナンスのしやすさや設置の柔軟性を理由に、CO₂ラックから炭化水素キャビネットへの切替を進める例が出ています。フランスのE.Leclercでは、全体の30%の冷蔵ケースをR290ベースのNovum LEAPシリーズに切替えました。
キーワード
トランスクリティカルCO₂システム
二酸化炭素(R744)を冷媒とする自然冷媒システム。高圧での運転が可能で、環境負荷が低く、商業・産業冷蔵に急速に普及中。
炭化水素冷媒(R290/R600a)
プロパンやイソブタンを指す自然冷媒で、非常に低いGWPを持ち、自己完結型冷蔵庫・冷凍庫に多く使われています。可燃性には注意が必要。
Fガス規制(EU F-Gas Regulation)
温室効果ガスであるHFCの段階的廃止を目的とする欧州連合の規制。2030年以降はGWP150以上の新冷媒機器は原則禁止予定。
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