- 欧州はFガス(HFC・HFO)およびTFAをPFASと見なして規制対象に
- PFASの定義にはOECD基準を採用、米国とは異なる取り扱い
- REACH規則のもと、禁止または限定的な使用猶予(デロゲーション)が検討中
- HVAC&Rや自動車空調など特定用途に最大13.5年の猶予案
- 規制決定は早くても2028年以降の見込み
「自然冷媒」へ移行促進か――環境団体は包括的規制を支持
欧州連合(EU)は現在、フッ素系温室効果ガス(Fガス)であるHFCやHFO、さらにその分解生成物であるトリフルオロ酢酸(TFA)を、有害な「永遠の化学物質(PFAS)」として規制対象に含める動きを本格化させています。
OECDの定義によれば、PFASは「完全フッ素化されたメチルまたはメチレン炭素原子を含む有機フッ素化合物」とされ、これには多くのFガスやTFAが該当します。一方、米国環境保護庁(EPA)はこの定義を採用しておらず、州によっては欧州と同様の定義を使うケースもあります。
EUの化学品規制「REACH」に基づき、デンマーク、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデンの当局が連名で提出した「PFASの包括的制限」案は2023年2月に公開されました。提案では、代替技術が確立されていない分野に限定的な猶予(デロゲーション)を設けつつも、原則としてFガスとTFAを禁止する方向です。
冷媒用途においては以下の猶予案が提示されています:
- 規則施行から13.5年間:既存のHVAC&R機器のメンテナンス・再充填用冷媒
- 規則施行から6.5年間:内燃機関車両の空調用冷媒
- 規則施行から6.5年間:軍用輸送車両の空調用冷媒
スウェーデンの環境NGO「ChemSec」の上級アドバイザーであるヨナタン・クライマーク氏は、「自然冷媒などの代替技術はすでに存在しており、Fガスの使用を段階的に廃止する動きが広がっている」と述べ、包括的な規制の必要性を強調しています。
ECHA(欧州化学機関)の科学委員会(リスク評価委員会RACと社会経済分析委員会SEAC)は、5,600件以上の意見を受けて検討中であり、最終的には欧州委員会が立法案を策定し、加盟国による投票で可決される流れです。正式な決定は早くても2028年以降と見込まれています。
キーワード
PFAS(パーフルオロアルキル化合物)
極めて分解されにくく、生物蓄積や環境汚染を引き起こす化学物質群。「永遠の化学物質」とも呼ばれ、世界的に規制強化の動きがあります。
Fガス(フルオロカーボン)
冷媒などに使われるHFCやHFOなどの人工フッ素系ガス。地球温暖化係数(GWP)が高いものも多く、環境負荷が問題視されています。
REACH規則
EUにおける化学品の製造・輸入・使用に関する包括的な規制枠組み。人と環境の保護を目的とし、有害物質の段階的廃止を推進します。