- 欧米豪の小売大手が自然冷媒への全面転換を加速
- 規制当局も導入の安全性と現実性を確認しルール緩和
- ALDI、METRO、Migros、Krogerなどが導入数を大幅拡大
- 豪州Woolworthsは100店舗目のCO₂導入店をオープン
- Ahold Delhaizeは2040年までに欧州全店を自然冷媒化へ
ファーストムーバーが道を拓く:企業の決断が生んだ市場と政策の変化
自然冷媒の採用は、もはや先進的な選択ではなく、グローバルに標準化されつつあります。この変化の原動力となったのが、ALDIやMETRO、Kroger、Migros、Woolworthsなどの“ファーストムーバー”たちです。
例えば、ALDI UKは2018年以降すべての新店舗で自然冷媒を採用しており、2024年夏には30以上の店舗が新たに自然冷媒化されました。同様にスイスのMigros Ticinoも、冷暖房・給湯すべてをCO₂で賄うスーパーをオープンし、2025年までの全店CO₂化を目前に控えています。
ドイツを拠点とするMETROは、658の店舗・物流センターのうち50%以上で自然冷媒のみによる冷却を実現し、2030年にはFガスの全廃を目指す「F-Gas Exit Program」を推進中です。
米国ではALDI USが2035年までの自然冷媒100%化を掲げ、すでに745店がCO₂システムを採用済み。Krogerも2025年から全新規店舗でCO₂システム導入を開始することを宣言しました。
オーストラリアのWoolworthsは創業100周年の2024年に100店舗目のCO₂システム店を開設し、拡大は続いています。
こうした企業の動きが、各国の規制当局に対して「自然冷媒でも商業的に成立する」ことを示す強力な証拠となり、安全性の実証やルールの見直しを促しています。EPAによるR290の充填量上限緩和などはその代表例です。
さらに、Ahold Delhaizeのような国際小売グループも2040年までに欧州店舗の自然冷媒化を宣言しており、アジア圏(インドネシアなど)にもこの流れが波及する可能性があります。
企業の戦略的な判断が、規制と市場の両面に影響を与え、世界の冷却業界の構造を根本から変えつつあるのです。
キーワード
ファーストムーバー(First Movers)
業界の中で他社に先駆けて新技術や環境配慮型施策を導入し、市場の変化をリードする企業。自然冷媒ではこれらの企業が業界の模範となっている。
R744(トランスクリティカルCO₂)
自然冷媒である二酸化炭素(CO₂)を用いた冷却システム。高圧対応が必要だが、環境負荷が非常に低く、スーパーマーケットを中心に普及が進む。
F-Gas Exit Program
Fガスの使用を段階的に終了し、全システムを自然冷媒へ移行する企業戦略。METROなどが採用し、脱炭素社会への移行に貢献している。
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