EVの冬の弱点を克服する?MAHLEが発表した新しいヒートポンプ技術

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現在の冷媒(R1234yf)からプロパン冷媒(R290)へのスムーズな切り替え可能

電気自動車(EV)の最大の課題のひとつは、寒い季節になると航続距離が大きく落ちてしまうことです。ガソリン車やディーゼル車にはエンジンがあり、その廃熱を利用して車内を暖めることができますが、モーターで走るEVには十分な廃熱がありません。そのため冬場に暖房を使うと、電気ヒーターがバッテリーの電力を直接消費してしまい、走れる距離が短くなってしまうのです。この「冬に弱い」というイメージは、多くの人がEVに乗ることをためらう理由のひとつになっています。

こうした課題に対して、自動車部品大手のMAHLE(マーレ)が革新的な解決策を提示しました。今年9月にドイツ・ミュンヘンで開かれた国際モーターショー「IAAモビリティ」で同社が発表したのは、ヒートポンプを組み込んだ新しい熱マネジメントモジュールです。これはEVの冷却、空調、暖房をまとめて管理する装置で、ヒートポンプを活用することで空気や車内で発生するわずかな熱を再利用し、効率的に暖房に変えることができます。

もちろん、ヒートポンプ自体はすでにいくつかのEVにも搭載されており、目新しい技術ではありません。しかしMAHLEのアプローチが特別なのは、ヒートポンプを単独の装置としてではなく、EV全体の熱マネジメントを担う統合モジュールの中心に据えている点にあります。冷却系統や空調をひとつのシステムとして最適化することで、部品点数やスペースを減らしながら効率を最大化しているのです。さらに、寒冷時でも航続距離を最大20%改善できると具体的な効果を示していること、現在の冷媒(R1234yf)だけでな将来的に環境負荷の少ないプロパン冷媒(R290)にも対応できる設計になっていることなど、他のEVにはない特徴を備えています。

この技術によって、従来はバッテリーを消耗していた暖房がぐっと効率化され、寒い日でも航続距離を最大で20%伸ばせるといいます。つまり、同じ充電量でもより長い距離を走れるようになるわけです。さらにヒーターを別途搭載する必要がなくなるため、システム全体がコンパクトになり、車両のスペースを節約できるというメリットもあります。自動車メーカーにとっては、開発コストを抑えつつ将来の車両設計にも柔軟に対応できる点が大きな魅力です。MAHLEによれば、この新しいモジュールは今後2年以内に量産が始まる予定だといいます。

EVの普及を妨げてきた「冬場の走行距離の短さ」という問題は、寒冷地に住む人にとって特に切実なものでした。MAHLEの新しい熱マネジメント技術は、その不安を和らげる現実的な解決策として大きな期待を集めています。もしこの仕組みが広く普及すれば、「冬にEVは不便」というこれまでの常識が変わり、EVがさらに身近な存在になるかもしれません。

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