寒冷地でも快適な走行を実現し、電動バスの航続距離と環境性能を大幅に向上
2025年9月3日、Thermo King(親会社:Trane Technologies)は、同社の電動バス向け製品ライン「TE Series」に新たにヒートポンプを追加したと発表しました。今回の「TE Series Heat Pump」は、特に冬季の寒冷地域や中程度の気候条件でも、電動バスの快適性と走行効率を高めることを目的としています。
これまで電動バスは、ディーゼル燃料を使用しないことで脱炭素化を推進してきましたが、暖房には電気抵抗ヒーターが使われることが多く、バッテリーを大量に消費するため航続距離が大幅に短くなるという課題がありました。新開発のヒートポンプは、空気中から熱を取り込み利用する仕組みを採用しており、従来のヒーターに比べて最大2.5倍のエネルギー効率を実現しています。その結果、摂氏4度(華氏40度)の条件下では航続距離が最大50%延長され、摂氏-7度(華氏20度)の厳しい寒さでも最大30%の航続距離向上が可能になります。
さらに、乗客の快適性を確保するため、外気温が約-7度まで下がっても補助ヒーターなしで十分な暖房性能を発揮します。これによりバッテリーの再充電頻度を減らし、運行コストや温室効果ガスの排出削減にもつながります。加えて、従来のディーゼル式ヒーターと異なり、直接的な排出ガスを出さない点も大きなメリットです。
このヒートポンプは、建物や住宅分野で培ったTrane Technologiesのノウハウを活かしており、すでに展開中のTE Series製品の制御システムをベースにしているため、運転手や技術者にとって新たなトレーニング負担が少なく、すぐに導入しやすい設計となっています。今後、アメリカだけでなく世界中の公共交通機関がこの技術を取り入れることで、環境負荷の低減とサービスの安定性向上が両立する可能性があります。日本においても、寒冷地の路線バスや都市部のEVバス普及に大きく寄与する技術として注目されるでしょう。
重要キーワードの解説
Thermo King
アメリカ・ミネアポリスに本社を構える企業。親会社はTrane Technologiesで、トラックやバス、鉄道車両など輸送分野の温度管理ソリューションで世界をリードしています。
TE Series Heat Pump
電動バス向けに開発された新型オールエレクトリックの高効率ヒートポンプ。従来の電気ヒーターよりも最大2.5倍効率的で、航続距離を大幅に延ばせる点が特徴です。
Decarbonization(脱炭素化)
二酸化炭素などの温室効果ガス排出を抑える取り組みのこと。公共交通分野においても重要視されており、電動バスやヒートポンプ技術は持続可能な都市づくりの鍵となります。