化石燃料からクリーンエネルギーへ、2027年の制度導入が示す世界の潮流
日本ではまだ聞き慣れないかもしれませんが、ヨーロッパでは2027年から家庭の暖房や自動車燃料にも「炭素価格」が課されることになりました。これはETS2(Emissions Trading System 2)と呼ばれる新しい排出量取引制度によるものです。
これまでEUでは、発電所や工場といった大規模排出源だけに炭素価格を課す制度(EU ETS)がありました。しかし、家庭用のガスボイラーや石油ストーブ、ガソリン車など、私たちの生活に直結する分野は対象外でした。そのため、生活の中で排出されるCO2の削減がなかなか進まないという課題が残っていました。
そこで導入されるのがETS2です。この制度では、燃料を供給する会社がCO2排出量に応じて排出枠(クレジット)を購入しなければならず、そのコストが最終的にガスや灯油の価格に反映されます。つまり、化石燃料での暖房は高くなり、ヒートポンプなどのクリーン技術が相対的に安くなるのです。
もちろん、炭素価格が上がると生活費の負担増を心配する声も出ます。そこでEUはSocial Climate Fund(社会気候基金)を設け、2032年までに870億ユーロを低所得世帯や小規模事業者の支援に充てる計画です。単なる負担増ではなく、「公平な移行」を実現しようという考え方です。
一方、産業界もすでに動き出しています。ヨーロッパのヒートポンプメーカーは70億ユーロ規模の投資を行い、生産体制を強化しています。しかし制度の実施が遅れれば、この勢いは失われかねません。そのため、各国政府には安定した政策運営が求められています。
日本にとっても、この動きは無関係ではありません。エネルギーコストや住宅の断熱性能に課題を抱える日本が、将来どのように炭素価格を取り入れるかを考える上で、ヨーロッパの事例は大きな参考になるからです。もしヨーロッパが成功すれば、世界の市場全体でヒートポンプや省エネ技術がさらに広がり、日本企業にとっても新しいチャンスが開ける可能性があります。
重要キーワード3つの解説
- ETS2:2027年に始まる新制度。家庭用燃料や道路輸送を対象に炭素価格を課すことで、化石燃料からの転換を促す。
- Social Climate Fund:ETS2の収益を財源に、低所得世帯や中小企業を支援する基金。公平な移行を目的とする。
- Heat Pumps(ヒートポンプ):空気や地中の熱を利用する暖房設備。効率が高く、ヨーロッパの脱炭素戦略の中核を担う。
