ディーゼル列車に代わる新しい選択肢、環境性能を高める「プロパン冷媒」に注目
オーストリア連邦鉄道(ÖBB)は、2028年から新型の電池式列車「FLIRT Akku」を導入します。この列車はスイスのStadler Bussnangが製造し、車内の空調設備(HVAC)にはLiebherr-Transportation Systemsが開発した新技術が採用されます。その大きな特徴は、冷媒としてプロパン(R290)を使う点です。
ここで重要なのは、「冷媒」が列車や建物の空調に欠かせないものであり、通常はフロン系の化学物質が使われてきたということです。従来の冷媒は冷却性能は高いものの、漏れた際に温室効果ガスとして大気に大きな影響を与えてしまう課題がありました。
一方、プロパン(R290)は自然由来の冷媒で、地球温暖化係数(GWP)が非常に低いため、環境への負荷を大幅に減らせます。さらに圧力特性が従来の冷媒R134と近いため、既存技術を応用しやすく、少ないエネルギーで高い冷却性能を実現できます。可燃性がある点は注意が必要ですが、Liebherrは鉄道用途に適した安全設計を行っており、信頼性の高いシステムとなっています。
ÖBBはこれらの電池式列車を導入することで、非電化区間や部分的にしか電化されていない路線、特にカンプタール鉄道でディーゼル車両を置き換える計画です。こうした動きはヨーロッパで広がる「脱ディーゼル化」と「持続可能な鉄道輸送」の流れを象徴しています。今後、日本の非電化区間でも同様の技術が導入される可能性があり、鉄道事業者にとっても大きな参考事例となるでしょう。
重要キーワード3つの解説
R290(プロパン冷媒):自然由来の冷媒で、温室効果ガスの影響が極めて小さい。省エネ性能も高く、今後の空調分野での有力な選択肢とされる。
FLIRT Akku:Stadler製の電池式列車。架線がない区間でも走れるため、ディーゼル車の代替として注目されている。
ÖBB(オーストリア連邦鉄道):オーストリア国内最大の鉄道事業者。環境対応を重視し、新しい技術を積極的に採用している。