エアコン冷媒が血液に? 拡散するTFAの驚くべき実態 (HFO-1234yf)

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車のエアコンから始まる環境汚染、その影響は私たちの飲み水や食卓にまで及ぶ

私たちが普段あまり意識しない車のエアコン。その中で使われている冷媒の一つにHFO-1234yfがあります。ところが、この物質が大気中に漏れ出すと、すぐに分解されてトリフルオロ酢酸(TFA)という物質に変わります。TFAは非常に水に溶けやすく、雨に混じって地表に降り注ぎます。そして一度環境に入ると分解されず、長期的に蓄積していく性質を持っています。

実際にTFAはここ30年間で濃度が右肩上がりに増えており、川や湖だけでなく、土壌や空気、植物や動物の体内にまで広がっています。最終的には私たちの飲料水や食べ物に混ざり、すでに人間の血液からも検出されています。最近の研究では、このTFAが「地球規模の境界を脅かす物質」とまで位置づけられました。

さらに今年5月、ドイツの三つの政府機関は、TFAが「生殖毒性があり、極めて持続性が高く、環境中を広がりやすい」として、欧州化学品庁に正式な評価書を提出しました。ヨーロッパではPFAS規制の一環として、冷媒ガスやTFAも含めた包括的な制限の議論が進んでいます。一方でアメリカでは見解が分かれており、EPAはPFASに含めていませんが、メイン州やミネソタ州など一部の州では独自にPFASとして扱い、規制に動いています。カナダも同様にPFASをクラスごとに管理しようとしています。

こうした動きに対し、化学業界は「HFO冷媒は安全だ」と主張し続けていますが、過去のフロンや他のPFASの事例を振り返れば、その言葉を鵜呑みにするのは危険です。今後は自然冷媒を利用した技術への転換が、次の世代を守るための最も効果的な道筋になると考えられています。

重要キーワード3つの解説

  • TFA(トリフルオロ酢酸)
    超短鎖の化学物質で、水に溶けやすく分解されないため、環境中に長く残り続ける。飲料水や食べ物を通じて人間の体にも入り込む。
  • PFAS(有機フッ素化合物群)
    「永遠の化学物質」と呼ばれ、自然界でほとんど分解されない。健康や生態系への影響が世界的に問題視されている。TFAもこの一部に含まれる。
  • HFO-1234yf
    車のエアコンに広く使われる冷媒ガス。温暖化係数が低いとされるが、大気に漏れるとTFAを生成するため、結果的に新たな環境リスクを生む。

今後の展開とインパクト

今後はEUを中心に規制が強化され、冷媒の選択肢として自然由来の代替技術が加速する可能性があります。もしこの流れが世界的に広がれば、自動車産業や冷却産業に大きな転換を迫るでしょう。一方で、すでに蓄積してしまったTFAをどうするかは解決が難しく、将来の飲料水や食の安全に長期的な影を落とすことになります。つまり、この問題は単なる「冷媒の選び方」の話ではなく、人類全体の持続可能性を左右する課題だといえます。

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