自社製造とコスト優位を武器に、ドイツ・イタリア・英国へ拡大。人材育成と生産能力強化でEUの脱ガス化目標に貢献。
スウェーデンのクリーンエネルギー技術スタートアップAiraは、既存投資家から1億5千万ユーロ(約175億円)の追加出資を受け、欧州でのヒートポンプ事業拡大を加速させます。同社は2022年に、破綻したNorthvoltの共同創業者が設立したVargasによって創業され、ガス暖房に代わるクリーンな暖房ソリューションの需要を狙っています。
欧州連合(EU)は今後10年で3,000万台以上のヒートポンプ普及を目指していますが、2022年の過去最高販売から一転し、2023年は販売減に転じました。それでもAiraのピーター・プレムCEOは「市場全体は国ごとに政府支援の差はあるが、当社は強い成長を維持している」と強調。中国製ヒートポンプとの競争も一部地域で見られる中、自社設計・自社製造によるコスト優位が差別化要因になっていると述べています。
今回の資金は、ポーランドの3億ユーロ規模の工場での生産拡大、ドイツ・イタリア・英国での事業展開強化、そして設置工事を担う人材の採用・育成に充てられます。Airaは現在1,200人を雇用し、年間売上高換算で2億ユーロ規模に到達。最大の課題は熟練した「クリーンヒート」技術者の不足であり、同社は教育・研修に積極投資しています。
今後の展開とインパクト
- EUの脱ガス化政策に沿ってヒートポンプ普及の加速役となる可能性
- 自社生産によるコスト優位が中国メーカーとの競争力維持につながる
- 人材育成強化により、設置工事のボトルネック解消と市場拡大の両立を狙う
- 他国市場への進出で、欧州全域でのブランド確立が見込まれる
重要キーワード3つの解説
- ヒートポンプ
空気や地中の熱を利用して暖房や給湯を行う省エネ技術。ガス暖房に比べてCO₂排出削減効果が高い。 - Vargas
Airaの創業母体。元Northvolt共同創業者が立ち上げた投資・事業開発グループ。 - クリーンヒート技術者
ヒートポンプの設置・保守に必要な専門スキルを持つ人材。現在欧州全体で不足しており、普及の鍵を握る。