- 2024年末時点で、産業用トランスクリティカルCO₂システムは4,900件と前年比48%増
- 低充填アンモニアシステムは3,600件、3年間で47%の成長を記録
- プロパンチラーは6,650件、前年比で33%の急増
- 大型コンプレッサーやセンサー技術の進化が導入を後押し
- 可搬性やエネルギー効率も導入拡大の鍵に
持続可能な冷却技術、欧州産業界で採用加速中 ― 自然冷媒の成長戦略
欧州では、環境規制や持続可能性の観点から、フロン代替として自然冷媒(CO₂、アンモニア、プロパン)の利用が急速に拡大しています。
トランスクリティカルCO₂システムは、2024年12月時点で産業分野における導入件数が4,900件に達し、前年から48%も増加しました。構成機器メーカーが大型コンプレッサーを開発し、少ないユニット数で同等の冷却能力を実現できることが普及の要因です。例として、Dorin社の8気筒CO₂コンプレッサーや、Danfoss BOCKのHGX56モデルが挙げられます。
低充填アンモニアシステムは、安全性向上と環境対応を背景に、過去3年間で47%増加しました。HB ProductsとHansenが共同開発したセンサー技術により、最大75%の冷媒削減と最大60%の省エネが可能となり、導入障壁が下がっています。加えて、パッケージ型システムの可搬性が、事業拡張時の再配置を容易にし、導入の柔軟性を高めています。
プロパン(R290)チラーは、2024年末時点で6,650件に達し、前年比33%の成長を示しています。EuroklimatやEnerblueといったイタリアメーカーが先導するほか、ドイツのYanmar Energy System Europeも販売を急増させています。病院やデータセンターなど多様な施設で使用が拡大中です。
これらの冷媒は、各々が異なる技術課題や規制環境に適応しており、欧州市場全体としては自然冷媒の多様化と技術革新が並行して進んでいます。
キーワード
トランスクリティカルCO₂
CO₂を冷媒とするシステムの一種で、高圧での運転により温暖化係数の低い冷却技術。食品業界だけでなく産業用途にも拡大中。
低充填アンモニア
従来より少ないアンモニア量で冷却を行うシステム。安全性と省エネを両立し、中小規模施設でも導入が進む。
プロパン(R290)チラー
自然冷媒プロパンを使用した冷却装置。高いエネルギー効率と環境性能を持ち、工場や公共施設での利用が拡大している。
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