Honeywellが開発した「BES LITE(Battery Safety Electrolyte Detector)」センサーが、QuestexのSensors ConvergeおよびFierce Electronics主催の「Best of Sensors」賞を受賞しました。受賞部門は「Best Power & Sustainability Solution」で、持続可能性と安全性に寄与する最先端技術として評価されています。
現在、リチウムイオン電池は電気自動車やバッテリーエネルギー貯蔵システム、産業機器、電動スクーターや自転車、さらには芝刈り機まで幅広く利用されています。しかし、普及の一方で「熱暴走」と呼ばれる現象による火災リスクも増加しています。熱暴走は電池セルの欠陥によって内部が劣化し、温度上昇やガス放出を経て、最悪の場合は火災や爆発につながる現象です。
BES LITEは、この熱暴走の初期段階で発生する電解液蒸気を選択的に検知することで、バッテリーマネジメントシステムに危険をいち早く知らせます。これにより、事故が拡大する前に対策を講じられるため、安全性が大幅に向上します。
このセンサーは特許取得済みの高分子材料を用いた業界初の電気化学式センサーであり、低消費電力で稼働可能。酸素を必要としないため、従来設置が難しかった環境でも利用できます。また、電解液蒸気以外のガスに反応しないため、誤警報を減らすことができるのも大きな特長です。
さらに、小型・軽量設計により、ドローンや電動タクシーといった都市型モビリティ、医療機器や軽量産業機械など、スペースが限られた機器にも搭載可能です。Honeywellは、EV向けや電池パック内の微粒子検知センサーも含めた幅広いポートフォリオで、バッテリー安全技術を進化させています。
今回の受賞は、電動化が進む世界において「安全で信頼できるバッテリー利用」の実現に向けたHoneywellの取り組みが高く評価された証といえるでしょう。今後はモビリティからエネルギー貯蔵まで多分野に広がる活用が期待され、業界全体に大きなインパクトを与えると考えられます。
重要キーワード3つの解説
- 熱暴走(Thermal Runaway):リチウムイオン電池が異常反応を起こし、温度上昇やガス放出を経て火災や爆発につながる現象。BES LITEはその初期兆候を検知する。
- 電解液蒸気検知:熱暴走の初期に発生する電解液の蒸気を選択的に捉える仕組み。誤検知を防ぎ、正確に危険を察知できる。
- 低消費電力・小型設計:長時間の稼働を可能にしつつ、ドローンや小型機器にも搭載できる柔軟性を持つ。
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