2027年から施行されるEUの車内空気質規制の影響と自動車業界の対応
欧州連合(EU)では長らく車内空気質に関する統一的な規制は存在していませんでした。これまで、車内の空気質は主に自動車メーカー各社の自主基準や化学物質規制に依存していました。しかし、近年ではEUが化学物質規制の枠組みを通じて新たな規制を導入する動きが進んでいます。特に注目すべきは、2023年7月にEUの公式報で公表されたEU規則(EU)2023/1464です。この規則により、ホルムアルデヒドの放散に関する新たな制限が設けられ、車内のホルムアルデヒド濃度が一定基準を超えると販売が禁止されることになりました。
具体的には、2027年8月6日以降、EU域内で販売されるすべての自動車において、車内のホルムアルデヒド濃度は0.062 mg/m³(62 µg/m³)を超えてはいけないとされています。この基準は、日本や中国よりも厳しい数値となっており、EUでの車内空気質管理の新しい指針となります。
また、ホルムアルデヒド以外の揮発性有機化合物(VOC)に関しては、現時点でEUでの明確な規制はありませんが、化学物質規制や自主的な環境認証により、車内のVOC濃度が抑制されている現状があります。たとえば、ドイツの「ブルーエンゼル」環境ラベルは、車内空気質が低い車両にエコラベルを付与しています。これにより、消費者の健康志向の高まりとともに、企業側も自社製品の環境性能をアピールする動きが活発化しています。
重要キーワード3つの解説
- ホルムアルデヒド
ホルムアルデヒドは、化学物質規制の対象として特に注目されている物質で、国際がん研究機関(IARC)によって発がん性物質として分類されています。EUではこの物質の放散に関する新たな規制を導入し、車内空気質の管理に新しい基準を設けています。 - VOC(揮発性有機化合物)
VOCは、車内に存在する可能性のある有害化学物質で、消費者にとっての健康リスクを高める可能性があります。EUでは直接的な規制はなくとも、化学物質規制を通じて車内のVOC濃度の低減が進められており、業界の自主的な取り組みも行われています。 - ブルーエンゼル(Blue Angel)
ドイツの環境ラベル「ブルーエンゼル」は、車両内装が低汚染であることを認証する自主規制制度です。VOCや臭気が少ない車両に与えられるこのエコラベルは、消費者にとっての環境志向を高め、企業の競争優位性にも寄与しています。