英国で新たな1000億ポンドのクリーンエネルギー資産が誕生へ ― ヒートポンプで暖房革命

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ガスボイラーから地中熱へ。南ウェールズで始まった未来型ネットワークが、家庭の暖房を根本から変える

2025年8月、イギリス初の投資家主導による地中熱ヒートポンプ(GSHP)ネットワークが、南ウェールズのパーク・エイリン(Parc Eirin)開発地域で始動しました。施工を担うのは英国のヒートポンプメーカーKensa(ケンサ)。このプロジェクトは、Octopus Energy Generation(オクトパス・エナジー・ジェネレーション)が管理する再生可能エネルギー資金によって支えられており、今後、1000億ポンド規模の新たなクリーンエネルギー資産クラスの先駆けとなると見られています。

パーク・エイリンでは、114戸の住宅にKensaの最新型「Shoebox NX」地中熱ヒートポンプが設置されます。これらのヒートポンプは、住宅内にコンパクトに収まる設計で、従来のガスボイラーのように使えるため、住民にとっては違和感のない切り替えが可能です。

ポイントは、共有型の地中インフラです。水道やガス、インターネットのように、地面の下にネットワークを張り巡らせ、個々の家庭には設備費の負担なく供給される仕組み。補助金に頼らず、投資によって実現されるこのモデルは、年間25万戸をカバーする目標で2040年までに拡大される見込みです。

この仕組みにより、住民は低コスト・高効率・低炭素の暖房を手に入れることができ、英国全体での暖房由来の二酸化炭素排出削減、そして電力系統への負荷軽減にもつながります。

ジェイン・ブライアント住宅・地方自治担当大臣は、「このプロジェクトは、気候に優しく、将来にわたって持続可能な住まいを実現する素晴らしい取り組み。私たちのパートナーと共に、より手ごろでエネルギー効率の高い住宅をウェールズ中に広げていきたい」と述べました。


重要キーワード3つの解説

  1. 地中熱ヒートポンプ(Ground Source Heat Pump)
    地中にある安定した熱を使って暖房や冷房を行う省エネ機器。空気中の熱を使うエアソース型よりも効率が高く、年間を通じて安定したパフォーマンスを発揮します。ガスに代わる低炭素の熱源として注目されています。
  2. ファンド主導型インフラ(Funded Network Model)
    住民が初期費用を負担するのではなく、投資ファンドがインフラを整備し、住民はそのサービスを利用する形。これにより、より多くの世帯がクリーンエネルギーにアクセスできるようになります。
  3. クリーンエネルギー資産クラス(Clean Energy Asset Class)
    再生可能エネルギーを活用した設備やネットワークに対する新たな投資対象。今回のヒートポンプネットワークは、エネルギー収益を生む「資産」として機関投資家やファンドが注目する分野です。

今後の展開とインパクト

この取り組みは、英国の住宅暖房を化石燃料から再生可能エネルギーへと一気に転換する鍵となります。新築住宅だけでなく、今後は既存の住宅にもこのネットワークが拡大されることで、イギリス中の暖房インフラが塗り替わっていくでしょう。

また、ファンドによる資金提供により、補助金なしでも成り立つ新しいビジネスモデルが確立され、同様の仕組みが他国へも輸出される可能性があります。住宅政策・エネルギー投資・気候変動対策が一体となったこのプロジェクトは、今後の脱炭素社会に向けたモデルケースとなるでしょう。

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