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CO₂は室内空気質の指標として適切か?──800ppm基準を巡る国際議論が加熱

  • AIRAH主催のIAQワークショップで「CO₂=IAQ基準」の妥当性が議論に
  • 多くの専門家がCO₂を単独指標とすることに懐疑的
  • 800ppm基準の科学的根拠や実用性が問われる
  • 一方、Morawska教授は「測定と普及のために必要」と支持
  • 空気質改善のためには多角的・現実的なアプローチが必要

AIRAH主催のIAQワークショップで、空気質の測定と基準値設定の妥当性を世界の専門家が徹底討論

オーストラリア空調・冷凍協会(AIRAH)は、今年開催予定の「IAQカンファレンス」に先立ち、RMIT大学で国際的な専門家を招いたハイブリッド形式のワークショップを開催しました。議題は、**「室内空気質(IAQ)の維持において、CO₂濃度800ppmを基準値とするのは適切か?」**という、非常に重要かつ論争的なテーマです。

セッションの冒頭では、ASHRAEや米国標準技術研究所(NIST)で長年空気質の基準策定に携わってきたDr. Andrew Persily氏が、CO₂に関する「誤解」を指摘。特に「1000ppmを超えると不健康」や「CO₂はIAQの代表的指標」という認識は科学的根拠が薄いと批判しました。

続いて、オーストラリアの機械換気基準「AS 1668.2」の専門家Sonia Holzheimer氏が登壇し、この基準が過去50年間でどのようにCO₂を扱ってきたかを解説。現在の基準はIAQの責任を明確に担っていないと指摘し、新たに「AS 1668.5」のようなIAQ専用の自主基準が必要だと提案しました。

デンマーク工科大学のPawel Wargocki准教授は、「CO₂自体の影響」に焦点を当て、3000ppmを超えなければ健康被害はほぼないと述べ、CO₂をIAQの代理指標とすることに懐疑的な姿勢を見せました。

さらに、米国ローレンス・バークレー国立研究所のDr. Max Shermanは、「800ppm基準はナンセンス」との挑戦的なタイトルでプレゼンテーション。CO₂レベルと空気質の間に因果関係がないこと、過剰な外気導入がエネルギー効率を損ねることを理由に、基準値の固定化に反対しました。

一方で、クイーンズランド工科大学のLidia Morawska教授は、**「現実的かつ測定可能な基準が必要」**と主張し、800ppmは十分達成可能であり、空気質向上の出発点として有効であると述べました。彼女は測定、意識向上、大規模調査、そして既存技術の応用を提唱しました。

Q&Aセッションでは、WELL認証のアジア太平洋代表Jack Noonan氏が加わり、業界認証制度の観点からCO₂の役割を説明。オーストラリアにおけるIAQ改善の緊急性が改めて強調されました。

Safer Air Projectの創設者Plum Stone氏は、持病を抱える人々の視点から「最小基準では弱者を守れない」と発言。現地の換気環境がCO₂センサーの警告音で改善された例を引き、IAQに関する現場対応の遅れを指摘しました。

最後に登壇した元ビクトリア州首相で建築家のTed Baillieu AO氏は、「政治家の本能は“何もしないこと”だ」と語り、専門家が合意形成し社会に提言すべきだと力強く訴えました。

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