低GWP冷媒でHVACR業界の未来を切り拓く
米国バージニア州アーリントンに本部を置く空調・暖房・冷凍協会(AHRI)は、地球温暖化係数(GWP)が300未満の新しい冷媒を評価する「低GWP代替冷媒評価プログラム(Lower-GWP AREP)」を発表しました。
これは、エアコン、ヒートポンプ、チラー、給湯ヒートポンプなどの分野で、より環境負荷の低い冷媒を見つけ出し、業界全体での重複作業を防ぐための共同研究です。AHRIは過去にも1990年代のR-22 AREP、2010年代のAREP-2で同様の取り組みを成功させており、今回が3回目の実施となります。
プログラムの流れ
- 化学メーカーへの調査を行い、候補となる冷媒をリスト化。
- 選定された冷媒について、コンプレッサー試験やシステム適合試験、冷媒の安定性・材料適合性試験を実施。
- 試験は参加企業の自社ラボで行い、各社が自費で協力。
- AHRIの技術委員会が試験プロトコルを策定し、試験の質を保証。
今後の展開とインパクト
2026年1月から試験が開始される予定で、米国だけでなく海外メーカーにも参加が呼びかけられます。このプログラムにより、低GWP冷媒の技術課題や適合性が明確化され、将来的には新たな冷媒規制にスムーズに対応できる道が開ける可能性があります。また、環境負荷の少ない冷媒の採用が進むことで、HVACR業界全体のカーボンフットプリント削減にもつながると期待されています。
重要キーワード3つの解説
- GWP(地球温暖化係数)
冷媒が地球温暖化に与える影響の度合いを示す指標。数値が低いほど環境負荷が小さい。 - AREP(Alternative Refrigerants Evaluation Program)
AHRIが主導する、代替冷媒の評価プログラム。業界全体で冷媒の実用性を検証する取り組み。 - HVACR(Heating, Ventilation, Air Conditioning, and Refrigeration)
暖房、換気、空調、冷凍を含む分野の総称。冷媒の進化が直接的に影響を与える産業領域。
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