- 2025年のEU経済成長率は1.1%、ユーロ圏は0.9%と前年並み
- 米中貿易摩擦と米国関税政策の不透明性が成長を抑制
- インフレ率は2025年にECB目標の2%前後へ早期収束見込み
- 住宅・設備投資は回復傾向も、企業心理と資金調達環境が重し
- 雇用は堅調で失業率は2026年に過去最低の5.7%に改善へ
緊張高まる貿易環境下でも回復の兆し
インフレの動向:目標達成が早まる
エネルギー価格の低下やユーロ高により、インフレは予想よりも早く鈍化しています。ユーロ圏のインフレ率は2025年に2.1%、2026年には1.7%となり、欧州中央銀行(ECB)の目標に収束する見通しです。EU全体でも、2024年の2.6%から2026年には1.9%まで低下する予測です。
雇用と所得:好調を維持
EU経済は2024年に100万人以上の雇用を創出し、2025〜2026年にも200万人の雇用増が見込まれています。失業率は2026年に5.7%と、過去最低を更新する見通しです。名目賃金は2024年に5.3%上昇し、2025年には3.9%、2026年には3.0%に鈍化するものの、実質賃金は回復基調にあります。
貿易と投資:外部環境が足かせに
輸出は2025年にわずか0.7%、2026年に2.1%の伸びにとどまる見込みで、米中関係の悪化やEUの競争力低下が影響しています。設備投資は2025年に1.5%、2026年に2.4%と回復するも、資金調達コストや市場の不透明性が引き続き重しとなっています。
財政・政策リスク:安定志向だが課題も
EUの財政赤字は2026年に3.4%、ユーロ圏では3.3%に拡大する見通しです。軍事支出増加に関する柔軟対応(Stability and Growth Pactの国家逃避条項)の影響はまだ完全には反映されていません。米中貿易協議の進展やEU域内改革の加速が上振れ要因となる一方、気候災害の頻発などが下振れリスクとして挙げられています。