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EUの「グリーンクレーム指令」(Green Claims Directive)案、停滞の背景と今後の見通し Heatpump, HVAC企業に影響

  • EUが企業の環境主張を規制する「グリーンクレーム指令」案を提案。
  • HVAC業界などに大きな影響を与えるが、政治的・経済的反発で進展が停滞。
  • 指令案の撤回が検討される中、代替的な消費者保護法が今後の規制を担う見込み。

環境表示の透明化を目指すEUの法案とその課題、産業界への影響を解説

EUが提案した「グリーンクレーム指令(Green Claims Directive)」は、企業が「エコ」「グリーン」など環境に配慮した主張を行う際に、科学的な証拠と第三者による検証を義務付ける法案です。この法案の背景には、欧州グリーンディール循環経済行動計画**があり、「グリーンウォッシュ(見せかけの環境配慮)」を排除することが目的とされています。

具体的な提案内容としては:

  • 環境主張の裏付け基準の明確化
  • 第三者機関による検証の義務化
  • ラベル制度の透明性強化

が含まれ、これにより消費者はより信頼性のある情報に基づいた選択が可能になります。

HVAC(暖房・換気・空調)やヒートポンプ業界では、以下のような影響が想定されています:

  • 「eco」「carbon neutral」などの表現は証拠がない限り使用不可
  • 製品の環境性能にはライフサイクルアセスメント(LCA)が必要。
  • 第三者認証にかかるコストと時間の負担が増加。
  • 中小企業の過剰負担や開発の遅延も懸念されています。

しかし、2025年6月現在、政治的対立や行政手続きの複雑さを理由に指令案は進展しておらず、欧州委員会は撤回を示唆しています。加盟国の支持の撤回や、企業・業界団体からの反発もあり、指令案の採択は見送られる可能性が高い状況です。

代わりに、2024年に成立した「グリーン転換消費者指令」(Directive on Empowering Consumers for the Green Transition)が、2026年から環境表示に一定の規制をかける見込みです。今後、行政手続きの簡素化と中小企業支援が再検討されることで、グリーンクレーム指令案の再始動もあり得ると見られています。

重要キーワードの解説

  1. グリーンウォッシュ:実際には環境に配慮していないのに、そう見せかける広告や表示のこと。
  2. ライフサイクルアセスメント(LCA):製品の生産から廃棄までの環境影響を科学的に評価する手法。
  3. 第三者認証:企業以外の独立機関が、製品の性能や主張の正当性を検証・証明する制度。
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