環境規制と半導体需要拡大を背景に、独立上場で新たな成長ステージへ
米Honeywellは2025年8月21日、子会社Solstice Advanced Materialsの独立上場に向け、米国証券取引委員会(SEC)へForm 10登録書類を提出しました。さらに10月8日にはニューヨークでInvestor Dayを開催し、投資家へ事業内容や戦略を詳しく説明する予定です。
Solsticeは冷媒、半導体材料、防護繊維、医療用パッケージといった分野を中心に展開し、2024年には売上高38億ドル、純利益6億ドルを計上しました。独自ブランド(Solstice®, Genetron®, Spectra®, Aclar®など)を擁し、世界21カ所の製造拠点と4カ所の研究開発拠点を持つグローバル企業です。
背景には、いくつかの大きな産業トレンドがあります。まず冷媒分野では、欧米やアジアで進む地球温暖化係数(GWP)の低い冷媒への切り替えが規制によって加速しており、Solsticeの低GWP冷媒はその流れに合致しています。また、半導体市場はAIや高性能コンピューティングの普及によって拡大しており、Solsticeの電子材料は需要増の恩恵を受けやすい分野です。さらに、防護繊維や医療用パッケージといった事業も、地政学リスクやヘルスケア需要の高まりによって成長余地があります。
Honeywellは「自社を三つの強力な独立企業に再編する」という大きな戦略を進めており、今回のスピンオフはその一環です。SolsticeがNASDAQに「SOLS」のティッカーで上場すれば、投資家は独自のビジネスモデルや成長性に直接アクセスできるようになります。中期的には、冷媒や半導体材料の分野での競争優位を武器に、環境規制や技術革新を追い風とした独立成長が期待されます。
重要キーワード3つの解説
- Form 10
米国でスピンオフや新規上場を進める際に提出が義務付けられた登録書類。SECによる承認を経て、独立企業としての透明性や情報開示が確立される。 - Investor Day
投資家向けに企業の戦略や業績見通しを発表する場。今回はSolsticeの独立後の方向性を示す重要なイベントであり、株式市場での評価を大きく左右する可能性がある。 - 低温暖化冷媒(LGWP Refrigerants)
従来の冷媒と比べて温室効果への影響を抑えた新世代冷媒。世界的な規制強化を背景に需要が急拡大しており、Solsticeの成長の柱となる。
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