EU新Fガス規則(EU) 2024/573が切り開くHVAC市場の未来

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冷媒規制がもたらす空調・ヒートポンプ産業へのインパクト

ヨーロッパで2024年に採択された「(EU) 2024/573」、通称新Fガス規則は、空調やヒートポンプ(HVAC)における冷媒の使い方を大きく変えようとしています。この規制は温室効果ガスの一種であるFガスを段階的に削減し、最終的に環境負荷の小さい代替冷媒への転換を強力に促すものです。

例えば、2025年からシングルスプリット型エアコンで高GWP冷媒を含む機器が禁止され、2027年以降はマルチスプリットやチラーにも厳しい制限がかかります。さらに2030年代に入ると、ほとんどの機器でFガスの利用が不可能になる見通しです。

こうした流れの中で注目されているのが、プロパン(R-290)や二酸化炭素(R-744)といった自然冷媒です。これらは温室効果が極めて低く、欧州を中心に実用化が急速に進んでいます。ただし、可燃性や高圧といった安全面での課題があるため、設計や施工ノウハウを持つメーカーにとっては大きなビジネスチャンスとなるでしょう。

また、自動車や鉄道、船舶などモバイル分野においても、R-1234yfやR-744などの低GWP冷媒への移行が進んでいます。とりわけEV市場の拡大とともに、冷媒選定は車両の性能やコストに直結する重要テーマとなり、日本のメーカーにとっても競争優位性を発揮できる領域です。

日本のHVAC企業にとって、この規制は単に輸出対応の問題ではありません。なぜならEUの動きは必ずグローバル市場へ波及し、アジアや日本国内にも同様の流れが及ぶ可能性が高いからです。したがって、今から低GWP冷媒に対応した製品開発や安全技術の確立を進めることが、中長期的な競争力の確保につながります。

重要キーワード3つの解説

  • Regulation (EU) 2024/573(新Fガス規則)
     2024年にEUで採択されたFガス削減規則。空調・冷凍機器に使われる冷媒を段階的に規制し、低GWP冷媒への転換を義務づけている。
  • GWP(地球温暖化係数)
     二酸化炭素を基準に温室効果の強さを数値化した指標。新規則ではGWP150や750といった具体的な数値を基準に、利用制限が設定されている。
  • 自然冷媒(R-290、R-744など)
     プロパンや二酸化炭素など、温室効果がほぼゼロの冷媒。安全対策は必須だが、規制強化の中で主流になると見られている。

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