- EU全体でわずか7%の家庭がヒートポンプに切り替えればロシア産家庭用ガスの輸入は不要に
- ヒートポンプはすでに2024年に24bcmのガス使用を削減
- 年間最大60億ユーロのエネルギー輸入コスト削減が見込まれる
- 社会気候基金などを活用し、導入資金は最大650億ユーロ規模
- ヒートポンプは脱炭素技術以上に「欧州の戦略的選択肢」として位置づけられている
1,400万戸の転換で13bcmのガスを削減──ヒートポンプが描くエネルギー自立と脱炭素の同時達成シナリオ
欧州ヒートポンプ協会(EHPA)は、欧州のエネルギー自立を確立する鍵は“ヒートポンプ”にあるとする新たな分析を発表しました。EUの家庭用化石燃料ボイラーのうち、わずか7%(約1,400万戸)をヒートポンプに置き換えることで、ロシアからの家庭用ガス輸入13bcm(130億m³)を完全に排除できるとしています。
■ ヒートポンプの効果はすでに実証済み:
- 2024年時点で、既存のヒートポンプは24bcmのガス使用を回避
- 最大5倍のエネルギー効率を持ち、電気で稼働するためCO₂排出も大幅削減
- ロシアのウクライナ侵攻以降、ヒートポンプはEU全体のガス需要を10%削減したとIEAも報告
■ 経済・安全保障・環境の“三方良し”投資
- 1,400万台の追加導入で、年間60億ユーロの輸入燃料コスト削減が2030年までに見込まれる
- 欧州のエネルギー市場を不安定な供給源から解放
- **社会気候基金(Social Climate Fund)**を通じた最大650億ユーロの補助金活用も視野に
■ 政策と産業界が求める「明確なEU戦略」
EHPAのポール・ケニー事務局長:
「私たちは、持続可能かつ内製化された暖房技術に転換することで、エネルギー安全保障を戦略的に強化すべきです」
欧州議会議員トマ・ペルラン=カーラン氏:
「暖房の電化こそがエネルギー価格の安定と安全保障のカギです」
ヴァイラント社やIEAなどの産業界も、2030年までに6,000万台普及の必要性を強調し、制度的支援の拡充を求めています。