フルーエンス、ヒューストンにHVAC・チラーの国内生産拠点を開設―米国内製造強化で税制優遇やエネルギー安全に布石

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米国の電力安定化と供給網強化に向けた戦略的展開、そして日本市場への波及が注目される

フルーエンス・エナジー(Fluence Energy, Inc.)は、テキサス州ヒューストンで新たな製造施設を稼働させ、HVAC(空調設備)やチラーなどの熱管理システムを「Gridstack Pro」用に国内で生産することを発表しました。これは、米国内での供給網を強化するための戦略の一環であり、貿易リスクの回避やプロジェクト納期の短縮、さらにはIRA(米国のインフレ削減法)の10%の国内製造コンテンツ・ボーナス適用条件を満たす狙いも含まれています。

この施設を含む米国内の5拠点では、2025年だけで1,200以上の製造雇用が創出されており、22,000 MWh超のエネルギー貯蔵容量を持つ90以上のプロジェクトが展開・契約中という実績を支えています。

一方、日本市場においてもフルーエンスは今後の展開に注力しています。ENERESとの提携により、日本の電力市場に特化したBESS(蓄電池エネルギー貯蔵システム)のトレーディングおよび最適化サービスを導入する予定で、2025年中の実運用開始を目指しています。日本特有の電力需給不均衡やグリッド安定化ニーズに応えるため、AIベースの最適化ソフト(Mosaic)との統合による収益性向上や運用効率アップが期待されます。

さらに、国際的には再生可能エネルギーの普及と脱炭素化を後押しする政策として、日本政府も約26億ドル規模の補助金を蓄電やその供給網強化に投じているという点も重要です。こうした政策支援とフルーエンスの国内展開戦略は、日本市場でも高い親和性を持つと見られます。


重要キーワード3つの解説(専門家向けに追記)

  1. IRA国内製造コンテンツ・ボーナス(10% ITC)
     米国のインフラ政策の一環で、国内で製造された部品・システムを使用するプロジェクトは税額控除率が10%上乗せされる制度です。これにより、都市運営・公共事業分野での蓄電池導入における経済性が大幅に改善されます。
  2. BESS最適化ソフト「Mosaic」と日本電力市場
     フルーエンスのAI搭載入札最適化プラットフォーム「Mosaic」は、日本の卸電力市場や需給制度に対応する形でENERESと統合される見込みで、電力トレーディングの収益性向上やグリッド安定化に資する点が注目されます。
  3. 日本の蓄電池補助政策
     世界と同様に日本政府もバッテリー供給網強化に向け、約26億ドルの補助金を投じている点は見逃せません。国産電池メーカーや蓄電プロジェクトの収益性向上に資するため、今後フルーエンスの技術導入や提携が進む可能性があります。

今後の展開/インパクトの可能性

地域エネルギー転換支援:フルーエンスのGridstack Pro™とMosaicの組み合わせが、地方自治体や再生可能エネルギー導入地域の電力安定化に貢献する機会にもなり得ます。

日本への波及:ENERESとの提携により、米国で培った製造・製品最適化技術を日本にも展開することで、日本企業への技術移転や官民連携の可能性が高まるでしょう。

政策とのシナジー:日本の蓄電池補助政策との連携で、現地調達(ローカルコンテンツ)によりさらなる助成対象となるモデル構築が期待されます。

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