規制の不在と自主基準による米国の車内空気質改善の動き
アメリカ合衆国では、車内空気質に関する連邦レベルでの明確な規制は存在しません。これに対して、自動車メーカーは主に自主基準に基づき車内の空気質を管理しています。米国の自動車規制は主に安全基準や排出ガス規制に集中しており、車室内のVOC濃度や空気質に関する法的要求はありません。そのため、車内空気質管理は業界団体や各自動車メーカーの自主的な取り組みによって進められています。
例えば、GM(ゼネラル・モーターズ)やフォード、ステランティス(旧クライスラー)といった主要な自動車メーカーは、それぞれ内装材に関するVOC放散規格を設け、部品サプライヤーに対して材料のアウトガス試験結果を求めています。特にフォードは、密閉された車内でのVOC分析を行うことで、新車の品質管理を強化しています。
背景としては、米国では「新車の匂い」が伝統的に好まれ、一部の消費者にとってはポジティブな印象を与えてきました。しかし、近年では健康志向の高まりにより、揮発性化学物質への懸念が広がっています。カリフォルニア州など一部の州では、有害化学物質が含まれる可能性のある製品には警告表示を求める規制も存在しますが、全国的な数値基準は未だに整備されていません。
重要キーワード3つの解説
- VOC(揮発性有機化合物)
VOCは車内に存在する有害化学物質で、これが高濃度で存在することが健康リスクを高める可能性があります。米国では、これに対する規制が厳格ではないものの、各自動車メーカーが自主的にVOC濃度を管理しています。 - Prop 65(プロップ65)
カリフォルニア州のProp 65は、消費者が有害化学物質に曝露される可能性がある場合に警告表示を義務付ける州法です。この規制は、新車販売時に車内に含まれる可能性のある発癌性物質について警告が表示されることがあります。 - HEPAフィルター
HEPAフィルターは高効率な空気清浄フィルターで、特にテスラが高級車向けに搭載しています。これは外気中のPM2.5や花粉を99%以上除去できるとされ、車内の空気質向上に貢献しています。