家電とIoTを統合し「生活に寄り添う家」を実現
LGエレクトロニクスは2025年9月、ドイツ・ベルリンで開催された国際家電展示会「IFA 2025」で、AIを中核に据えた新しいスマートホーム構想を発表しました。今回の中心となったのは、AIプラットフォーム「ThinQ AI」と、Generative AIを搭載したホームハブ「ThinQ ON」です。
これまでのスマート家電は「便利に操作できる」レベルにとどまっていました。しかしLGが目指しているのは、ユーザーの生活を学習し、先回りして最適な環境を自動で整える家です。たとえば「寝るよ」と言えば、照明を消してカーテンを閉め、エアコンを快適な温度に調整し、空気清浄機を静音モードに切り替える。さらに「1時間後に除湿機をつけて」といった複雑な指示も理解して実行できます。
背景には、ヨーロッパを中心に省エネと快適性の両立が重要視されていることがあります。地球温暖化で冷房需要は増え続けていますが、電力消費を抑える技術がなければ環境負荷が高まります。LGはこの課題に対し、AIによる効率的な家電制御で応えようとしています。
IFAでは、ThinQ ONと連動する9種類のIoTデバイス(空気質センサー、温湿度センサー、スマートプラグ、スマートドアロックなど)も発表されました。これにより、空調や空気清浄機を含む家電をセンサー情報に基づいて自動制御できるようになります。たとえば湿度が高まれば除湿機を起動し、微細なほこりが増えれば空気清浄機を強めるなど、家庭の空気環境をリアルタイムに管理する仕組みが整いつつあります。
さらに、ThinQ UPによって家電はソフトウェア更新で新機能を追加可能になり、ThinQ Careは故障予兆を検知してメンテナンスを提案します。つまりLGは「一度買ったら終わり」ではなく、進化し続ける家電を提供しようとしているのです。
LGが目指すのは、単なる家電メーカーではなく、人の生活全体を支えるAIホームプラットフォーム企業になること。その実現に向けた大きな一歩がIFA 2025で示されました。
重要キーワード3つの解説
- ThinQ AI
LGのAIプラットフォーム。家電の使用データを学習し、省エネや快適性を最適化する。ユーザーごとに進化する「頭脳」の役割を果たします。 - ThinQ ON
Generative AIを搭載したAIホームハブ。自然な会話で複数の家電やIoT機器を一括制御し、生活習慣に合わせた最適環境を自動で作り出します。 - Matter規格
異なるメーカーのスマートデバイス同士をつなぐ国際標準規格。LGのシステムはMatter認証を取得しており、幅広い製品と連携できる柔軟性を持っています。
