- EHPAがEUに「簡素・迅速・公平」な産業支援枠組みへの再設計を要請
- 産業用ヒートポンプに48か月の柔軟な完了期限と明確な支援を求める
- カーボンCCfDの導入と、水素並みの支援率(50%)を電化にも適用すべき
- ESCOやEaaS事業者に直接助成を導入し、大衆化を促進
- ガス利用支援の“抜け穴”を閉じ、真の脱炭素方針に整合させる必要がある
産業用ヒートポンプとフレキシビリティ技術への公平な支援、ESCOモデルへの直接助成、そして“ガス支援の抜け穴”排除を求める包括提言
欧州ヒートポンプ協会(EHPA)は2025年4月、EUの新たな産業支援枠組み案(CISAF)に対して、脱炭素社会の実現を加速するための包括的な改善提言書を提出しました。EHPAは現行の枠組みを歓迎しつつ、手続きの簡素化、助成判断の迅速化、そして中小企業や新興事業者への公平なアクセスの確保が不可欠であると強調しています。
■ なぜ“簡素化”がカギなのか?
EHPAは、「簡素化」は単に手続きを短縮することではなく、特に中小企業(SMEs)でも理解・活用できる明快な構成と助成フローの可視化を意味すると主張。要件・申請方法・支給スケジュールをセクションごとに明確に記載することを求めています。
■ 予測可能な助成スケジュールの重要性
現在の枠組みには具体的な承認期限がなく、企業側の事業計画立案が困難。EHPAは、助成申請から最大6か月以内に決定を下すよう、インディケーター・タイムラインの設定を提案しています。
■ 産業用ヒートポンプとフレキシビリティ技術への支援強化
ヒートポンプは産業部門の脱炭素化に不可欠であるにもかかわらず、36か月のプロジェクト完了期限では不十分。EHPAは最大48か月への延長を提案。さらに、**需要応答型の柔軟性技術(Demand Response)**が、蓄電を伴わないことを理由に除外されないよう、定義の明確化と相互運用性基準の導入を訴えています。
■ 二方向型カーボン契約(CCfD)の導入と公平な助成率
EHPAは、運用コスト(OPEX)に対応する持続的な支援として、**カーボン・コントラクト・フォー・ディファレンス(CCfDs)**の導入を推奨。加えて、水素プロジェクトに50%の支援がある一方で、電化技術(ヒートポンプなど)には35%しかない現状を不公平とし、是正を求めています。
■ 製造支援は「ヒートポンプ本体」だけでは足りない
EHPAは、コンプレッサー・熱交換器・インバーターなど主要部品も対象とした製造支援の拡張を要求。これらを付属書で明記することにより、サプライチェーン全体の明確な支援対象化を提案しています。
■ ESCO・EaaS事業者への直接助成の必要性
初期費用の障壁を取り除くため、エネルギーサービス会社(ESCO)や「サービスとしてのエネルギー」(EaaS)モデルに対する直接助成を提案。現在の融資・出資型支援ではこのビジネスモデルに適さず、大規模展開が困難になっていると指摘します。
■ “化石燃料例外”を認めるな
最後にEHPAは、現行案に残された**「正当な理由があればガス利用を支援できる」抜け穴**に反対を表明。GHG削減閾値を厳格に設け、例外措置を事実上封じるべきだと主張しています。