アメリカの家庭でTFAを検出:冷媒ガスの副産物が体内にまで入り込む

2023年、アメリカ・インディアナ州の家庭を対象にした研究で、冷媒ガスの副産物であるTFA(トリフルオロ酢酸)が、室内のほこり、水道水、血液、さらには尿からも検出されました。研究を行ったのはエモリー大学(アメリカ)と南方科技大学(中国)の研究者たちで、このような大規模なTFAの室内汚染を報告したのは初めてです。

調査では、81人の住民から合計324の試料(ほこり、水、血液、尿)を採取し、47種類のPFAS(有機フッ素化合物)とその前駆体を分析。その結果、TFAやPFPrAといった「超短鎖型PFAS」が、すべての試料で最も多く検出されました。特にTFAは、**ほこりからは84%、水からは95%、血液からは74%**の割合で検出され、いずれも他のPFASを大きく上回る濃度でした。

さらに、ほこりや水に含まれるTFAと血液中のTFAに有意な相関があることがわかり、家庭内の粉じんの吸入や水の摂取がTFAの主要な摂取経路である可能性が示されました。

一方で、これらの経路は血液中のPFAS全体の濃度の約20%しか説明できず、他にも未解明の曝露経路が存在すると指摘されています。研究者たちは「市販の飲料水からもTFAが高濃度で検出されている以上、一般の人々にも健康リスクが存在する可能性がある」と警告し、さらなる調査の必要性を訴えています。

なお、研究者の一人は「TFAがたんぱく質や脂質に結びつく性質を持つことが、体内に長く残る原因かもしれない」と述べています。また、環境科学者のハイディ・ピカード氏も「超短鎖型PFASが血液中に存在するという事実は、何らかの生体影響を持つ可能性を示唆している」と述べ、今後の追跡調査に期待を寄せました。

重要キーワード3つの解説

  • TFA(トリフルオロ酢酸)
    HFOなどの冷媒ガスや一部の農薬・医薬品の分解によって生じる化学物質。水やほこり、食品などから人体に入り込む可能性があり、血液中にも検出されている。
  • 超短鎖型PFAS
    炭素数が2〜3個の非常に小さなPFAS。従来の長鎖型PFAS(PFOAなど)に比べて生体蓄積性が低いとされてきたが、今回の研究では血液中での存在が確認され、影響が懸念されている。
  • 室内曝露
    TFAなどの化学物質が家庭内のほこりや飲料水を通じて体内に入り込むこと。外部から持ち込まれるほこりや公共の水道が、思わぬ曝露経路になっている可能性がある。
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