再生可能エネルギーとMatter対応家電で「手頃で使いやすい暮らし」を世界に届ける
スウェーデン発の家具メーカーIKEAは、家具や雑貨だけのブランドにとどまらず、エネルギーやスマートホームの分野にも積極的に踏み出しています。2025年5月からは、ドイツで再生可能エネルギー企業Svea Solarと提携し、空気源ヒートポンプ(空気‐水型)の販売を開始しました。これらはスウェーデンのAira社が製造し、-25℃まで対応できる高性能機種で、冷暖房のほか給湯も可能です。従来の空調より最大で5倍効率的であり、CO₂排出量を最大75%削減できる点が大きな魅力です。さらに、IKEA FamilyやBusiness Network会員は15%割引を受けられ、ドイツ政府の補助制度を活用すれば最大70%が還元されます。設置やメンテナンス、修理を含むパッケージで、モデルに応じて最長15年の保証が付く点も安心材料といえるでしょう。
一方でIKEAは、2025年からスマートホーム戦略も本格化させています。国際標準規格であるMatterに対応した20種類以上の製品を投入し、自社のハブ「DIRIGERA」を通じて他社製品とのシームレスな連携を実現しました。その狙いは、技術を前面に押し出すのではなく、あくまで「生活に自然に溶け込む」こと。インテリアと調和するデザインや手頃な価格を維持しながら、スマートライト、センサー、空気質モニターなど幅広いラインアップを展開しています。2026年以降も20種類以上の新製品を追加予定で、価格は10ドル前後からと、普及を意識した設定です。
こうした取り組みは、IKEAの掲げる「民主化されたデザインとソリューション」の延長線上にあります。大量消費者が手に取りやすい価格で、持続可能でスマートな暮らしを提供することが、同社の大きな戦略です。今後はドイツ以外の欧州諸国、そして世界への展開が予想され、住宅分野の脱炭素化やスマートホームの普及に強いインパクトを与える可能性があります。日本でも補助制度と連携した導入が進めば、エネルギーコスト削減と環境負荷低減の両立に大きな効果をもたらすでしょう。
重要キーワード3つの解説
- ヒートポンプ:空気中の熱を利用して効率的に冷暖房や給湯を行う装置。従来型より省エネ効果が高く、CO₂削減に有効。
- Matter:異なるメーカーのスマートデバイスを相互接続できる国際標準規格。操作性と互換性を飛躍的に高める。
- 民主化されたデザイン:IKEAが掲げる理念で、「多くの人が手に届く価格で、使いやすく、日常生活に溶け込む製品」を意味する。
