冷媒回収義務とGWP制限で、機器・車両業界に大きな影響
シンガポールのNational Environment Agency(NEA)は、冷蔵・冷凍機器や車両のエアコンに広く使われているHFC(ハイドロフルオロカーボン)冷媒に対して、新たな規制案を発表しました。HFCはオゾンを破壊しない一方で、CO₂の数百倍以上の温室効果を持つ強力な温室効果ガスとされており、各国で規制が進んでいます。
今回の規制案の柱は二つです。まず、新しく販売される機器や車両に使える冷媒は「GWP150以下」に制限されます。GWP(Global Warming Potential)は地球温暖化への影響度を示す指標で、数値が小さいほど環境への負荷が少ないことを意味します。
次に、廃棄される機器や車両から冷媒を必ず回収する義務が導入されます。対象はスーパーなどで使われる集中型の商業冷凍システム、食品倉庫用の大型冷凍設備、乗用車、小型商用車(LGV)、冷凍トラックです。これらを解体する際には、GWPが15を超える冷媒を現場で回収し、専門業者を通じてリサイクルや破壊処理を行う必要があります。さらに、施工やメンテナンスを行う企業は四半期ごとに作業記録をNEAに提出しなければなりません。
こうした措置は、2030年までにシンガポール全体の温室効果ガス排出量を約6,000万トンCO₂換算まで削減するという国家目標を支えるものです。業界には新しい低GWP冷媒への切り替えや回収体制の構築といった負担が生じますが、早期に対応する企業は、環境配慮型のビジネスとして信頼を高めるチャンスともなります。
重要キーワードの解説
- HFC(ハイドロフルオロカーボン):冷蔵庫やエアコンに広く使われる冷媒。オゾン破壊はしないが、温室効果が非常に強い。
- GWP(Global Warming Potential):温室効果ガスの地球温暖化への影響度を示す指数。CO₂=1を基準に算定。今回の規制では150以下が基準。
- 冷媒回収義務:機器廃棄時に冷媒を大気放出せず回収し、専門業者が適切に処理する仕組み。