- 欧州19カ国でのヒートポンプ販売数は前年比22%減の231万台。
- ガス価格の変動と支援政策の変化が影響し、市場成長が鈍化。
- EHPAは2030年までに6000万台の導入目標に向け、政策と価格の安定性が重要と指摘。
気候変動対策とエネルギー安全保障の鍵を握るヒートポンプ市場の今後の展望

EHPAのレポートによると、2024年、欧州のヒートポンプ市場は厳しい一年となり、19カ国合計での販売数は約231万台と、前年から22%の減少となりました。特にチェコ(-64%)とドイツ(-48%)の落ち込みが大きく、一方で英国は56%の成長を見せました。
現在、欧州全体では2550万台のヒートポンプが設置されており、これは全世帯の約12%に相当します。フランス(650万台)とイタリア(420万台弱)がトップです。これらの装置により、年間210億立方メートルのガス輸入を回避、54億ユーロの節約にもつながっています。
2022年の市場の急成長は、ウクライナ侵攻によるガス価格の高騰と政府の補助政策の強化が背景にありましたが、その後の経済低迷、支援策の縮小、ガス価格の下落、そしてヒートポンプに関する誤情報が広がったことで、販売は減少傾向にあります。
このままでは、欧州が掲げる2030年までのヒートポンプ6000万台導入目標に1500万台不足する可能性があると指摘されています。これを防ぐため、EHPAは以下の要素が必要だと強調しています:
- 電気料金体系の見直しにより、ヒートポンプの競争力を向上
- EUグリーンディール関連政策の迅速な実施
- 安定した投資環境と明確な戦略
産業面では、欧州内に300以上の製造拠点、43万3000人の雇用があり、販売機器の最大73%が欧州製です。
重要キーワード3つの解説
- ヒートポンプ(Heat Pump)
空気や地熱などから熱を取り出して冷暖房を行う装置。ガスボイラーより効率的でCO₂排出が少ない。 - エネルギー安全保障(Energy Security)
輸入エネルギーへの依存を減らし、自国内の再生可能エネルギーで安定供給を目指す政策。 - EUグリーンディール(EU Green Deal)
EUが進める気候変動対策と産業革新の政策パッケージ。再生可能エネルギー導入や排出削減を柱とする。