EUは「永遠の化学物質」と呼ばれるPFAS(ペルフルオロアルキル・ポリフルオロアルキル物質)に対し、健康および環境上の懸念から厳格な規制を検討している。
- 欧州化学品庁(ECHA)がPFASを生成する物質の規制案を公表。
- HFC125、HFC134aをはじめとする主要冷媒や複数のHFOが禁止対象となる可能性。
- 一方で、R32は化学構造上の理由から規制を免れる可能性。
- 規制の整合は複雑:ECHAは健康リスクを重視するのに対し、Fガス規制は地球温暖化係数(GWP)を基準にしている。
- 最終決定は2025年に見込まれ、施行は2026~2027年に始まる可能性。
PFAS規制がHVACR業界を揺るがす可能性
欧州連合は、分解されにくく自然界に蓄積するPFASの環境・健康リスクに対処するため、大胆な措置を講じようとしている。強固な炭素-フッ素結合を持つPFASは「永遠の化学物質」として知られ、自然環境からも検出例が増えていることから、早急な対応が求められている。
ECHAの監督の下、5つの欧州諸国が提案を主導し、暖房・換気・空調・冷凍(HVACR)分野を含む幅広い産業でのPFAS利用を抑制しようとしている。これにより、HFC125、HFC134a、HFC143a、さらにHFO-1234yfやHFO-1234ze(E)など広く利用される冷媒が大きな影響を受ける可能性がある。一方で、人気のある冷媒R32は化学的特徴から規制を免れる見通しだ。
欧州議会は、PFAS規制を改正後のFガス規制に組み込むことを提案しているが、健康リスクに焦点を当てるECHAの視点と、GWPを基準とするFガス規制の枠組みをどう統合するかが課題となっている。
規制導入のロードマップ
- 公的協議:2023年3月開始
- 科学委員会による審査:2024年を通じて実施予定
- 最終決定:2025年見込み
- 規制施行:2026~2027年に開始の可能性
HVACR業界にとって、この変化に適応するには、環境・健康基準の両方に対応する新冷媒や新技術を模索する必要がある。時間は刻々と迫っており、欧州の冷却の未来は「PFASフリー」へと大きく舵を切るかもしれない。
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